頂き物

□覚えていて
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漸くにして、共に過ごせる休暇が訪れた。


日々繰り返す仕事の疲れもあり、出掛ける事は諦めて、並んで座る窓際。

最近は随分肌寒くなって、暖を取るように湯呑みを頬に当てた。

――以前、こうして一緒に過ごしたのはいつだっただろう。


降り出した雪に見入る冬獅郎をちらりと見遣って考える。


確か、二月くらい前だった気がする。

それからは二人共、特に冬獅郎が多忙で、仕事中に顔を見る事さえ難しかった。

同じ隊に所属している特権も、こんな時には役立たず。

付き合い始めた頃から予定していた誰もが羨む甘い思い出作りも、まだまだ先の話になりそうだ。

溜息が出そうになるのを抑え、温くなり始めた湯呑みに口を付けた。




「…悪いな、何もしてやれなくて」




頬杖を着いた冬獅郎は、雪から視線を逸らす事なく呟いた。


「何かしてやらなきゃって思うんだが、お前に割ける時間が無くて…」

「そうでしょうとも。冬獅郎は隊長なんだから」

「お前なぁ…」


可愛いげの無い事を言ったと思う。

もっと別の言い方があったと思う。


それでもこう言ってしまうのは、少しでも気持ちを知って欲しいからだ。


隊長と呼ぶだけで、物凄く遠い存在になってしまって。

恋人なのに、傍に居る時間なんか微々たるもので。



遠くても・傍に居られなくても、どれだけ想っているかを知っていて欲しくて。




頬を膨らませて拗ねるのを見てくすっと笑われた。
人差し指で膨らみを突かれて、口唇の隙間から漏れた空気がぷうっと間抜けな音を出し、重かった雰囲気を取り払ってくれた。




「今度はちゃんと計画立てて…」


髪を梳く手は思ったよりも大きく、強い意思を湛える翡翠色の大きな目も優しげに細められていて。


「…どっか、出掛けようぜ?」


問い掛けるこの声も、いつかは低くなってしまうのだろう。


――適わないなぁ。


見た目はまだ子供なのに、誰よりも強くて優しい最愛の人。


アナタが好きだから、アタシと同じだけ愛して…、なんて我が儘も言えなくなる。

けれど知っていて欲しい。




「冬獅郎がずっとここに居てくれたら、どこにも出掛けなくていい」


笑顔で抱き寄せてくれるのが嬉しくて、小さいけれど大きな背中に腕を回す。


「ずっと一緒に居る。別れるなんて言わせねぇしな」


耳元で囁かれる声に反応して、心臓が派手に脈打った。


どうか覚えていて。




アナタの言葉や行動に、呼吸にさえも一喜一憂するアタシの想いの丈を…




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