3年D組みんな仲良し

□三日月祭まで勝負です。
2ページ/73ページ

 三月。もうすぐ行われる三日月祭の準備のため、放課後、教室で飾り付け用の花を作っていた。

 ちなみに三日月祭というのは俺の通う学校で毎年三月、卒業式の前々日に行われる、三送会のことだ。

 三送会と言うよりはミニ文化祭と言ったほうがわかりいいかも。一年・二年の各クラスで出し物(ステージで発表する合唱や演劇だったり、模擬店だったり)を準備して、卒業して行く三年生に感謝の気持ちを込めて、それを披露する。

 うちのクラスはもともと何か飲食店を出す予定だったんだけど、生徒会の審査に落ちて、今回は展示係になった。

 展示係。三日月祭から卒業式までの三日間、校内を紙で作った花や、ちぎり絵や在校生からのメッセージや三年生の思い出の写真やらで飾りつけをする係。校内と言っても主に三年生が使っていた教室前の廊下や体育館など限定された場所だし、大きなものを作るんでなければただひたすら紙を切ったりちぎったり貼ったり折ったりするだけだから楽と言えば楽。地味と言えば地味。

「こう言ったらあれかもしれませんけど、俺、部活に入ってたわけでもないんで今の三年生に世話になった覚えとかないんですよね。正直、卒業するなら勝手にしてくれって気分です」

 同じ花係の紫音さんに愚痴をこぼすと、紫音さんは可笑しそうに笑いながらも同意してくれた。

「そう思ってる人いっぱいいますよ。だけどこうして放課後はちゃんと居残って花を作るんだから、真田くんは真面目ですね」

「真面目っていうか、サボる勇気がないだけなんです」

 一番楽そうな花係を選んだのに、それでサボったら他の係の奴らに後で何言われるかわかったものじゃないし。

 そう言おうと口を開きかけると突然、軽快なメロディが鳴りだした。

 本当は学校に携帯電話を持ってきちゃいけない決まりだから、慌てて音を止める。

 気まずくなって紫音さんを見る。目が合うと、「大丈夫、私も持ってきてますから」と言ってくれたのでちょっとほっとした。

 ディスプレイには新着メールの文字。差出人は母ちゃんだった。内容は『大至急帰ってきなさい』の一言だけ。いったい何だっていうんだ。

「どうかしました?」

 紫音さんに今着た母ちゃんからのメールを見せる。

「何があったかわかりませんが、とにかくすぐに帰った方がいいですよ」

「いや、家の母ちゃんのことだから、そんな大した用事ではないと思います」

「でも『大至急』てつけるくらいですから、絶対何かあったんだと思いますよ。ここは私がやっておきますから、お母さんのためにも早くお家に帰ってあげてください」

 紫音さんにそう言われ、俺もなんとなく不安になり、作業を切り上げて帰ることにした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ