桐青★島準

□たまにはこんな訪問者
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彼女…ってオレのこと、だよな?まさか彼氏がいるとかは言わねえだろうし。
てか慎吾さん大学で恋愛トークとかすんの?


「…はあ、まあ一応」
「可愛い?」
「え…………ビミョー、すね」
「ビミョー?そうなの?あいつ合宿に派手な歯形つけてきててさ、虫よけに彼女がつけたとか言って」
「………ああ、ついてましたね」

…てか、つけたのはオレだけど。
そういや慎吾さん、風呂で先輩に歯形のことつっこまれたっていってたっけ。この人だったのか。



「可愛いとか盛大に惚気るからさ、一回見てみてえと思って。でも島崎が可愛い可愛い言ってるだけかあ、アバタもエクボみたいな」
「…可愛いっていってました?」
「ん?ああ」


慎吾さんが外でオレのこと惚気るなんて。照れ臭いけど正直嬉しい。

慎吾さんがオレのことを大事に思ってくれてるのをオレは十分わかってて。
だけどそれでも事あるごとに拗ねてみたり怒ってみたりしてしまうオレを、そんなとこも含めて好きだって言ってくれる。

可愛い、なんてガラじゃねえし、他のヤツに言われんのはゴメンだけど、慎吾さんにそう思われてるのは……嬉しい。


緩みそうになる顔を何とかおさえて、慎吾さんの荷物を預かると部屋まで持っていく。
アパートの階段を上がる間も、油断すると綻びそうになる口元を噛み締めながら。



「島崎ぃ、お前こないだ可愛い可愛い自分で言ってたけど高瀬に聞いたらお前の彼女ビミョーって言ってたぞー」


ドアを開けた瞬間オレの後ろから響いたでかい声。
腰掛けたままの慎吾さんは一瞬目を丸くしてオレのほうを見ると、ちょっと笑って目尻を細めた。


「え、準太がそう言ったんすか?」
「おぅ」
「…や、可愛いですよー、マジで。てか準太が凄げえ面食いなんすよ。ハンパねぇすから。な、準太」


意味ありげにオレの方を見る慎吾さん。…まあ確かにオレの彼氏はカッコイイすけどね。
自分でそれ、言っちゃいますか?ってオレの視線に、ふ、って目元で笑ってみせる。


「ああ、それとですね先輩」
「?何だよ」
「オレの彼女、すっっげえ床上手なんすよ」
「…っ!」


床上手、って言葉にかあっと顔が熱くなる。
意味ありげな笑みを、更にいやらしくして、慎吾さんがオレの反応を伺ってる。いやむしろ楽しんでる。


「マジで?!」
「マジっすよー、もぉサイコー」

そっちの話題が大好きらしい慎吾さんの先輩の食いつきようといったら、もう。


きっとオレの反応は慎吾さんの予想した通りのものなんだろう。
赤くなったり青くなったりしてるオレを見て、楽しそうに慎吾さんが笑う。
いいように甘やかされて、手の平の上で転がされて。
だけどそんな慎吾さんの傍らにいるのが心地好いと思ってるオレは、きっと慎吾さんに関してはもう重症。
だけど…うん、それでいい。

二人の会話を聞きながら、作りかけのカレーを作るべく包丁をにぎる。
慎吾さんの先輩は遠慮のカケラもなく、カレー3杯食って帰っていった。








Fin.
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