桐青★島準
□高瀬準太、14才の夏。
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「じゅんさーん!」
夏休みも後半、だけどじりじりと照りつける陽射しの中、自転車を漕ぐオレの頭上から降り注ぐ声はひとつ年下の後輩のもの。
「おう、休憩中か?」
フェンスを挟んだ向こう、大きな大きな向日葵の花の下で手を振る利央に、一旦自転車を停めて近寄った。
「ここ涼しいんだよな、風が通って。」
「準さんの特等席だったもんね。ところで準さん、どこいくんすか?」
「タケんとこ。」
「男二人?色気ないっすね。」
「ほっとけよ。」
少し前に中学最後の大会が終わって、オレ達3年は引退した。野球ばっかやってたから、残りの休みは遊びたおす…そう決めたのに、思いの外野球をやってない時間って長く感じて暇を持て余してしまう。
「っと、準さんオレもう行かなきゃ。」
「おぅ、頑張れよ。」
利央がかけていったあとには大きな向日葵。
まるで自分を見下ろしているみたいなその大きな花の後ろには吸い込まれそうなほどの、青。
…あんなにしんどくて嫌だったのにな、練習。
向日葵の後ろに広がる青はまるで自分の心にぽっかりとあいた穴のようだ。
来年の今頃は高校の、やはり野球のユニフォームで、泥にまみれて白球を追うのだ。
だけど今、自分は。
力無く自転車のペダルを漕ぎ出す。同じく先日引退した、親友のもとへと。
つかの間の、休憩。
高瀬準太、14才。
島崎慎吾に出会う、7ヶ月前。
fin.
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