慎吾のページ

□あいたくて
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9月20日、午後11時50分。

11時を過ぎたころからベッドの上に転がって、日付が変わるのを待っている。

…明日は慎吾さんの誕生日で、誰よりも先におめでとうが言いたくて。

本当は会って言えたらよかった。

部活が終わって、さっきまでは一緒にいたんだけど、明日の部活が午前中だって言ったら帰ることを勧められた。

夏大で負けてしばらく部活をサボっていたオレを無理強いすることなく、傍にいてくれて…自分の意思で部に戻れるよう背中を押してくれた。
慎吾さんは、新しいチームになってサボってた分周囲とぎこちなくなったオレに、今は大事な時だからって部活を優先させる。
体調管理だったり、メンタルな面だったり、様々な面で気を遣わせてしまってる。

情けないけど、失った信頼を取り戻すのはそれだけ難しいんだって自分でもわかる。

日付が変わるその時に、本当は一緒に居たかった。
叶わないのならせめてその瞬間、1番最初におめでとうと言いたかった。

あと、3分。
リダイアルボタンを押すと、鳴りだすコール音。程なくして電話から聞こえる、いつもの声。


『もしもし?準太?』

「慎吾さん、起きてました?」

『天下の受験生だからな。準太こそまだ起きてたのか?』

「あ……………はい。」

『早く寝てくれないと、帰らせた意味がねーんだけどな。』

「う…すみません……。」


くすっと電話の向こうで慎吾さんが笑う気配がした。二人だけの時に見せる穏やかな笑顔を思い浮かべて、オレも自然と笑みがうかぶ。

その時、枕元にある目覚ましの針が重なった。


「あ…慎吾さん、誕生日おめでとうございます。」

『ん、ありがとう、準太。』



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