桐青★島準

□たまにはこんな訪問者
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日曜の午後。

合宿の疲れをおとす為に部活はいつもより少し軽めのメニュー。
普段より早く練習が終わって、寄り道もせずまっすぐ帰宅した。

予想通り慎吾さんはまだ帰ってきていない。大学に入ってからも共に野球を続けてるオレ達の間では先に帰ったほうが晩飯の準備をするってのが暗黙のルール。
冷蔵庫を覗くと肉の賞味期限が近い。作るのも楽だしカレーでいっか。

最初の頃はろくに何も作れなかくて慎吾さんの手を煩わせてばかりだったけど、最近は簡単なものならある程度作れるようになった。まあ慎吾さんみたくあれやこれや作るのは無理だけどさ。あの人本当器用だから。

先に米を研いで、ニンジンやら玉葱やらを切ってたらピンポーンって呼び鈴が鳴った。
慎吾さんは呼び鈴鳴らさねーし、保険か新聞の勧誘だろうか。


「はーい?どちらさんですか?」
「準太?オレ。ゴメン、ドア開けて」
「あ…ちょっとまって下さいね」

手に持った包丁を置いて鍵を開け扉を開くと、そこには見慣れない男と、男に肩を借りて立っている慎吾さん。


「…ちょっ…どうしたんすかその足!」
「あー…練習中にちょっとヘマして」
「あれはどっちかっつーとお前のヘマってよりあいつのヘマだろ」
「折れたりとかは…」
「してねぇよ、軽い捻挫」
「まあ靭帯とか酷くやってないだけ良かったっちゃあ良かったな」


練習中、接触を避けようと無理な姿勢で足を着いたという慎吾さんの足首は白い装具でがっちり固定されていて、なんとも痛々しい。
肩を貸してくれていたのは大学の野球部の先輩で、慎吾さんと同じくレギュラーメンバーなんだとか。
とりあえず慎吾さんを家の中に入れ座らせ、慎吾さんの先輩の車に積んだままの荷物を下ろしにいく。荷物と一緒に車にのせられていた松葉杖に、本当は酷い怪我なんじゃないかと心配になった。



「ええと…名前何てったっけ?」
「高瀬っす」


いきなり声をかけられて、ちょっと声がうわずった。そんなオレを見て、慎吾さんの先輩は、んなかたくなんなくていーから、って言うと言葉を続けた。


「高瀬は島崎と一緒に住んでんだよな?」
「はい」
「島崎の彼女見たことある?」
「…え?」







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