物語

□【エピローグ】
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「雨の日の殺戮者・a」



 神が、行方を眩ませてから約二年。
 神が起こした大量無差別殺人事件も、人々の記憶の片隅からとうに消えた頃のある日。
事件は、起こった。
 長官は、自分の仕事場である長官室で書類に目を通していた。
 すると、扉がある方向から突然、「カタッ」という音がし、長官が書類から顔を上げると、長官室のドアの前にフードを目深に被ったの男が一人立っていた。
 その男は「お久しぶりだね長官。今日は、貴方をお迎えに上がりました。俺が誰だか分かりますか?」と、長官に話しかける。
 長官は、「貴様…。まさか、神か。」と、引き吊った顔で裏返った声で言う。
 それに男は、「いかにも。しかし、今日は貴方をお迎えに来た名もない死神です。」と、フードの下から覗いた口元にニヤリと悪趣味な笑みを浮かべる。 そして、今までパーカーのポケットに突っ込んでいた右手をスッと出す。
 その手には、ナイフが握られていた。
 神はそれを無言で前に突き付ける様な形で構える。
 もう片方の左手は、ポケットに突っ込んだままだ。
 神は、一歩前に歩み出る。
 すると、長官が、「やっ止めろ。はやまるな。今君を助けてやれるのは、私だけだぞ。」と、少しずつ後ずさりしながら言う。
 それを聞き、神は口元を裂けるかと思うほどに吊り上げ、「あははは。残念ながら、お前らの助けはもういらない。それに元々お前らは、俺の枷(かせ)になってただけ。今の方が自由に殺れて楽しいよ。」と、笑う。
 長官は、神の狂った様を見て、一層顔を引きつらせる。
 そして、「嫌だ。私はまだ死にたくない!」と、叫び、電話の受話器を奪う様に掴み取り、耳に当てる。
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