プレイ記

□イベント
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 大扉を開いたリンクは、こちらに背を向けるゼルダを視界に入れました。
 「……よく ここまで 辿り着いてくれました リンク……」
 振り向いた彼女は、しかし他人行儀な口調で話しかけます。
 どこか憂いを帯びたその表情に、リンクは違和感を感じました。
 「もう インパから聞いていますよね? ここは遥かな昔……
 終焉の者と呼ばれる魔族の長と 女神が戦った大地の傷が まだ 癒えていない過去の時代
 ……そう スカイロフトで 語り継がれる伝説は おとぎ話ではなく 真実の物語なのです
 全てを お話ししましょう……」
 彼女はその表情のまま、光が差し込む天井を仰ぎます。
 「トライフォース……それは万物の理すら ねじ曲げ 手にした者の願いを叶える 古代神の創造した 万能の力
 世界を欲した終焉の者は トライフォースを手中に収めようと 魔物をあやつり 戦をしかけてきました
 最悪の事態を恐れた女神は 大地を切り抜いて 人間と共に トライフォースを空へと逃がした……
 それが 私達の故郷スカイロフトです
 苦闘の末…… 女神ハイリアは 終焉の者を封印しました」
 
 女神ハイリア……
 
 「けれど彼の強大な力の前では 封印を永くは保てない…… それは火を見るよりも 明らかでした
 終焉の者が封印を破り 復活を果たせば 戦いで深手を負っていた女神に もう為す術は ありません……
 このままでは終焉の者は 必ず復活する ……この大地に生きる者にとって それは世界の終わりを意味します
 彼を完全に滅するため 女神ハイリアは 2つの策を講じました」
 リンクは何かを感じ取った様に息をのみました。
 「1つは選ばれし者を導く為に あなたが背負った剣に宿る精霊 ファイを創造すること
 そしてもう1つは…… ハイリア自身が神の体を捨て去り 自らの魂を人間に転生させること
 そう…… 終焉の者を消滅させる為 ハイリアは 古代神の遺産を 使おうと決意したのです
 神が創りしもの でありながら 神の一族が使うこと叶わぬ万能の力 トライフォース……
 その奇跡に すがる為 女神は 神の力も 不老の肉体も 捨て去る道を 選びました……
 もう気付いているでしょう リンク……
 選ばれし者は あなた 人に転生した女神ハイリアは……
 私……ゼルダなのです」
 
 それが、真実なのか。
 
 「あの 鳥乗りの儀の日…… ギラヒムの竜巻に巻かれた 私は 地上へと落下し
 魔族の手に落ちる寸前 封印の地の老婆に救われました」
 離れた場所で静観するインパ様はここで俯きます。そして背を向け2人のいる場所から下がりました。
 「ハイリアの記憶を失っていた私は 彼女から 自分の正体を…… 為すべき事を 聞かされ
 女神像に祈りを捧げるために 各地の神殿をめぐりました
 女神像から 記憶を得た私は 女神の遣いであるインパに導かれ この過去へと辿り着いたのです……」
 彼女はリンクに近寄り、その瞳を見て続けます。
 「……全ては 終焉の者の復活を 阻止する為でした……
 リンク…… 封印を受けた終焉の者は 人の形を奪われ 獣に姿を変えています
 ……けれど そんな状態でも 野に放たれれば 彼は簡単に 世界を破滅させてしまう
 終焉の者が封印から はい出る事を なんとしても阻止せねばなりません
 私は これより この地で……この時代で 封印の安定を図ります
 私が ここでそうしている限り 私達のいた時代までは かろうじて彼を抑えられるのです」
 その言葉にリンクは驚きの表情をしました。
 「女神ハイリアが…… 過去の私が施した封印を 少しでも長く安定させておく……
 それが 記憶を取り戻したゼルダの 行うべき使命なのです」
 いつの間にか彼女の顔から、憂いの色が消えています。
 「リンク 女神がファイを……最強の剣をあなたに託した理由の1つ
 それが 私達の時代で あなたが戦った巨大な魔物…… 終焉の者の撃退なのです
 あなたは その剣で 二度も 彼を退けてくれました ……ありがとう リンク」
 目を見開いているリンクは、何も言えずにいました。
 「そして……長い旅を経て あなたは 多くのものを 手に入れました……
 数多の謎を克服し 知恵 を 剣をきたえ 共に成長し 力 を 女神の試練に打ち勝ち 勇気 を
 今の あなたには 神の遺産を…… あのトライフォースを 手にするに足る力が 宿っているのです」
 そう言って左の手を差し出します。リンクはいつかの時と同じ様に自分の手を重ねました。
 「多くの苦境を乗り越え この地にたどり着きし勇者よ
 その 知恵を 力を 勇気を 認め いま そなたに女神の刃を 授ける
 そなたと そして 結ばれし剣に 大いなる退魔の力を!」
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