お話。

□狐の面を被った。
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「ねぇ、阿散井くん」
「……ん?」
「虚圏に狐はいるの?」
「あぁ?お前何聞いて……」
「い る の ?」
暫くして考え込んだらはっとして罰の悪そうに口を開いた。
ねぇ今狐じゃないの想像したでしょ?
例えば眼鏡クッキーに。
例えば狐饅頭。
あ、あと、ゴーグル?
そう言った単純で明快な思考に辿り着くのは良いが顔に出さないでくれるかな。
かなり不快。
ていうか、死んでほしい。(嘘だけど)
「……いる…だろ」
「ふーん」
「ふーんってなんだよ!お前から聞いてきたんだろ!」
「だって阿散井くん間違ってるからさ。居るわけないよ狐」
だってあんなとこに動物が生きてけるわけないし。
「はぁ?!お前、聞いといてなんだよ!!すっげぇムカつく」
はいはい。
それ位で青筋立てないでよ。
「煩いなぁ……あー、でも狐の形した虚ならいるかも」
「……」
辛気臭いな。
めんどくさい。
「無理、すんなよ?」
「は?何、気持ち悪いんだけど」思わず鼻で笑ってしまった。
あ、ごめん。
そんなつもりじゃないんだけど自然に。
「な、おま」
「あー、はいはい阿散井くん。お鼻に蛆虫付いてまちゅよー」
「………!〜〜〜ッ!!!」
急いで鼻を削ぎそうな勢いで払って慌てる。
わー。
おもしろい。
「冗談も通じないのか君には」
「!」
「てめぇ!」
「勝手に本気にした阿散井くんが悪いのに僕を殴るのかい?酷い」
掴み掛かる僕よりそりゃ図体のでかいこいつは唸った。
「ムカつく……!」
「………けど僕はそんな理不尽なことされても、君を親友だと思ってるから」

「ね?」

なんだかさっきより顔をしかめたけど、素直に喜んだ。
「吉良……」
本当、
「嘘」
頭悪いね。
しかも単純だし。
さっき絶対潤ってきたでしょ?
ちょっとコイツ良い奴とか不覚にも思ったでしょ?
「……やっぱすげぇムカつく」
「それはどうもありがとう」
「俺、お前みたいな幸薄そうでしかもすげぇ高飛車な奴が同期にいて良かったよ」
「僕も君みたいな単細胞が傍にいてくれて感謝してる」
とりあえず我慢が効かなくなったのか後ろから蹴られた。
「卑怯者」
体格では絶対勝てないのにさ。
「うるせぇ、なんとでも言え」
しかも自分で蹴っておきながら背中を擦り始めた。
「………阿散井くんってさぁ」
「あー?」
「変なとこで優しいよね」
「 … 」
「今ほっぺ赤いでしょ?絶対顔見たら笑っちゃうよー、あ、ごめんもう笑ってる」
「お前はいちいち一言多いんだよ」
「うわぁ。久々に褒めてもらった。ありがとう」
「………うぜ」

背中を擦る手がおっきくてあったかいなぁなんて、僕は笑った。
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