短編集

□金木犀の人
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金木犀の匂いが漂う時期になると、

決められていたかのように私は金木犀の人を思い出す。

毎年、毎年。

それ以外の時期には他の人から尋ねられない限り、

自分自身で金木犀の人を思い出すことはない。

金木犀の季節にだけ、私が自ら金木犀の人を思い出す。

いつのことだったのかは覚えていない。

けれども、金木犀の匂いの季節に出会ったわけではないということは確かだった。



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