Magic!

□第三話 刺客そして救援
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「おまえが例の邪魔をした魔術師か?」
シアンの真後ろから声がした。次の瞬間、創魔がシアンに飛んだ。シアンは自分も創魔を出し防ぐ。ロストは手から魔力を弾く。それは途中で鋭い五つの剣に変わった。シアンは三つ防ぎ、一つかわしたが最後の一つだけを肩に受けてしまった。剣の刃から血が滴る。
「くっ…」
「シアン!!」
アサギは戦いで誰かが血を流すのを初めて見た。シアンは肩から剣を引き抜いた。幸い深くは刺さっていなかった。心配そうな顔のアサギにシアンは、
「大丈夫。これぐらいいつものことよ」
と言い、光の魔術を放つ。しかしロストは既にシアンの背後に回り込んでいた。
「『そこに現れしは蒼き闇 飲み込みつくせ、水虎(すいこ)!』
(なんて早さ…)
シアンが攻撃を防ぐ間すらなく、大量の水がシアンに牙を剥く。その水圧は凄まじく、大地をえぐるほどだ。魔物の力がなければアサギも飲み込まれただろう。
(シアンはどこだ?)
滝のような水の中で、シアンはどこにも見えなかった。しかもロストはまだ攻撃をやめない。
(そうだ!!)
アサギは水の中に飛び込んだ。思った通り水はアサギがいるところだけ弾かれた。アサギは奥まで入っていく。するとうずくまっている金髪が見えた。
「シアン!!」
アサギは走った。アサギがシアンの近くに立ち、スケボーを持って魔物の保護の空間を広げることでシアンの安全を確保した。
「アサギ…」
シアンは息が苦しそうだ。これだけの水圧を結界を作り出してどうにか凌いでいたらしい。アサギが来たことで結界は解かれたがシアンの結界はまさに崩壊寸前だった。
「こんなに強い相手…戦ったことないわ」
シアンがまだゼイゼイしながら立ち上がった。肩の傷も癒えていない。
「大丈夫か!?」
シアンは頷くが、ガクッと膝から崩れ落ちた。アサギが肩を貸し、立ち上がらせる。
「全然大丈夫じゃね〜だろ!!とにかくここを出なきゃ…」
しかしシアンにはそれだけの体力が残っていない。アサギは心の中で念じた。
(魔物、このままじゃやられちまう。だから力を貸してくれ!)
するとアサギを大きな魔力が包んだ。
「ここから出るぞ。シアン。しっかり掴まってろ!!」
どうやるのかはわかっていた。アサギはスケボーで高くジャンプした。魔物の力で助走なしでも2人は公園の時計よりも高く跳び上がった。その様子は、鳥だってびっくりして落っこちてしまうかもしれない。見ている人がいたら、口をあんぐり開けて次の瞬間カメラを探し始めるだろう。ロストも目を見張った。
「行くぜ…スーパーツイスト・ドロップアサギ!!」
アサギが体を捻りながら落下した。シアンは直前でアサギから離れた。体力は限界だが高いところから無事に飛び下りるぐらいはできる。アサギは技の最中も全身から魔力を足に集めた。体を捻ることでイメージがしやすくなりスムーズに魔力は足に移動する。
「創魔」
ロストが創魔を出す。創魔は途中から剣に変わるがアサギには効かない。
キン!!
「なんだ?」
ロストの足を、何かが拘束した。シアンの拘束の術だ。シアンはロストがアサギに気をとられているうちに、魔法陣を描いていた。
「これで避けきれないわ!」
アサギの落下スピードはどんどん増す。あれだけ高く跳び上がったのだ。力学的エネルギーはとてつもなく大きい。
ロストが拘束術を解くより前に、アサギがロストの頭上に到達した。
「はあぁぁぁ!」
「!!」
ズガ―――――ン!!!
大音量の爆発音が辺りに響いた。同時に激しい砂煙が公園を覆った。シーソーやらブランコやらという遊具は粉々に砕けちり、もはや子供たちに至福の時を与えられる代物ではなくなっていた。
アサギは落下スピードに回転のエネルギー、さらには魔物の魔力を加えたスケボーをロストたたきつけたのだ。魔力がなくてもずいぶんな威力だ。実力のある魔術師でも、受けきるのは難しいだろう。
「よっしゃ〜『スーパーツイスト・ドロップアサギ』成功!!」
砂煙の中からアサギが笑顔で現れた。シアンはアサギを見つけると近寄って、
「すごいわアサギ!!あんなこと、私には出来ない!」
「シアンもすごいよ。あれだけボロボロでまだ術使えるなんて。拘束術だっけ?助かったよ」
2人はお互いに讃えあった。しかし、もうもうと立ち上る煙が晴れると…なんとロストが傷を負いながらも立っていた。
「!!」
「そんな!なんで立っていられるの!?」
「思ったほど力がないわけではないらしい。おまえ、魔物の力が使えるのか」
ロストは静かにアサギを見た。
「なら、ここまで手加減しなくてもいいんだな」
すると一秒もしないうちにロストの姿が掻き消えた。アサギはわけもわからず吹き飛ばされた。
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