Magic!

□第二話 魔物退治と潜む影
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「そうね、私から連絡を入れるから私の家に来てくれればいいわ。これ、家までの地図ね。それとその時なるべく多く魔よけとか武器になりそうなものを持ってきて。あなたには魔物があるけど、絶対安全とは言えないわ。もしもの場合は私が責任をとるけど…ちょっと待って」
シアンの鞄から心地よいメロディーが流れていた。シアンは家の地図をアサギに渡してから自分の鞄から真っ白い携帯電話を出した。アサギは持ってきちゃダメだといおうとしたが、自分もスケートボードを持ち込んでいるし、シアンは携帯を遊びに使っていなさそうなので、やめた。
「任務依頼だわ!」
「え――――――っ!!」
「ほら、読んで」
アサギは食い入るように携帯電話の画面を見つめた。そこには事件の新たな被害者が出たこと、問題の神社に1番近い位置にいる魔術師がシアンであること、被害を起こしているのが魔物だと確認されたこと、その魔物について(アサギには全く意味がわからなかった)、最後にシアンにその魔物を退治するように…そして女子高生の如く大量の絵文字だった。
「このメールは個人任務中心に動いている魔術師何人かずつに担当の政府の魔術師がつくんだけど、私の担当の人からよ。政府軍第十六班のリーダーもしているの。」
「その人、女の人?」
「ええそうよ。シャーナさんていうんだけど、それがどうかした?」
「ううん、なんでもない」
アサギが慌てて言う。政府軍の班のリーダーと聞いて、筋骨隆々の大男を想像したアサギは女だと聞いてとても安心した。なにしろそんな男が絵文字大量のラブリーメールを送っているところは、想像がとても苦しい。
「依頼が来た以上、これは私の任務だわ。アサギ、今日の午後8時、私の家の前に遅れないように来て。神社で魔物を退治するわよ。」

地図を頼りにアサギはシアンの『家』にたどり着いた。さすがシアン、わかりやすく詳しい地図で、その辺の地理に詳しくないアサギでもなんなく来ることができた。目の前には3階建てのアパートがあった。部屋の番号まで聞いていないからここで待てばいいだろう。下手に部屋の前を歩き回って不審者扱いされたら面倒だ。
「来てたのねアサギ、行きましょ!」
上から声がしたと思った次の瞬間、シアンがアパートの3階からアサギの隣に飛び降りてきた。アサギはびっくりしたが、シアンは魔術師だ。これぐらいどうってことないのだろう。
2人は夜道を神社に向かって歩く。アサギはこの時の為に、家中を駆けずり回って様々な道具を見つけて持ってきていた。
「ちょっと胡散臭いのもあるけど、言われた通り魔よけや武器になりそうな物持ってきたぜ。」
アサギは肩から下げたスポーツバッグを指差した。バッグはパンパンだ。
「そう。それなら少しは安心だわ。魔物は恐らく前より力が強くなっている可能性があるから。」
アサギは家に帰ってから見たニュースを思い出した。神社で2人の人間が何者かに襲われた。しかも昼間に。現場を目撃した人は誰もいなかったが、今回の被害者も外傷は何もなかったが、意識不明の重体らしい。前回の被害者もいっこうに目を覚ます気配はない。
「魔物の名前はピディーカー。霊的な場所に好んで住み着くの。一度住み着くと死ぬまでそこに居座るわ。誰かから魂を奪っては、奪ってきた魂を操って遊ぶの。人を脅かしたり怖がらせたりしてね。」
アサギは魂を奪われると聞いてゾッとした。青くなった顔のアサギを見て、シアンが続けた。
「でもピディーカーに魂を奪われても数時間で魂はもとの主のところに帰るわ。ピディーカーは魂をずっと捕まえておくことが出来ないのよ。魂を食べることも出来ないしね。食べようとすると魂がピディーカーをすりぬけてしまうらしいわ。つまりそれぐらい、ピディーカーの力は弱いのよ」
「でもシアン、今回のヤツは強くなってるかもしれないんだろ?」
「ええ、ピディーカーはさっきも言ったように、数時間しか魂を捕まえていられない。でも今回の被害者は一日経っても目覚めない。さらに、次の犠牲者は昼間襲われた。ピディーカーは夜間しか活動出来ないのよ。陽の光に弱くてね。こんなの、異常だわ。だから退治も大変かもしれない。私も気を引き締めないと」
シアンがギュッと手をにぎりしめた。そこからパチパチと魔力がほとばしる。
「あのさ、前から聞きたかったんだけど、魔術ってどんなのがあるの?」
アサギが質問した。これはとても知りたいことだった。
「たくさんあるわよ。今は時間がないから一つだけ。後は任務に来れば後々説明するわ。ま、これは正確に言うと魔術ではないけれど、『創魔』というのがあるわ。」
「『創魔』?」
アサギが首を傾げる。シアンが説明する。
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