Magic!

□第一話 魔術師との邂逅
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「くっそ〜あのダンゴマンめ〜。いきなりオレをあてやがって…。この前も授業の最初にオレ指してたし。オレに恨みでもあんのか…?」
放課後、アサギは道端の石を蹴飛ばしながら歩き慣れた道を歩いていた。アサギは帰宅部なので放課後になると帰り、スケボークラブがある日はスケボークラブに行き、クラブがない時は家で寝ている。アサギはまだ1時間目のことを根に持っているらしい。いつも帰り道考えている本日の夕食が冷凍食品か手作りか、シチューかカレーかなどということは全く頭にない。
(今日転校してきた七枝雪って子もなんか気になるし…あの子は一体…)

カッ!

電撃が飛んできて、アサギをかすった。
「えっ?」
目の錯覚かと、アサギは激しく目をこすった。
「なんだ、今の……?」
そしてまた次の瞬間、今度は細い炎が飛んできた。
「うわぁっ!!」
炎はスレスレでアサギから外れた。
「…どうなってんだよ?」
アサギは何が何だかわからない。すると、どこからか声がした。
「おい、いたぜ。やっぱりあいつだ。」
「あれが例の…。よし、捕獲に入るぞ。」
2人分の声だ。すぐに同じ電撃と炎が、同時に違う方向からアサギの方へ。
(死ぬ!!)
そう思ってアサギは目をぎゅっと閉じたが…何も起きない。どうやらまた電撃と炎は逸れていったようだ。
「見たか、本物だ。」
「ああ、あのお方がおっしゃっていた通り、かなり価値がありそうだ。」
声が好奇心でうずうずしているような調子で聞こえてくる。辺りを見回しても声の主の姿は全く見えない。
「おい、誰だてめぇら!姿見せないなんて卑怯だぞ!!」
アサギが見えない相手に向かって叫んだ。電撃がまたしても飛ぶが、やはり電撃はギリギリでアサギには当たらない。
自分に攻撃が当たらない事を悟ったアサギは、
「いい加減にしないとサツ呼ぶぞ!!サツだぞサツ!警察!暴行罪もしくは殺人未遂で現行犯逮捕だからな!!」
まともに電撃や炎を飛ばしてくる相手に警察という言葉が通用するとは到底思えなかったが、アサギは何か叫んでいないと動悸に耐えられなかった。
「うるせぇな。外のヤツだけ殺すか?」
「ダメだ。あのお方は外側も一緒に連れてこいとおっしゃった。もういい、捕獲しろ。」
「わかったよ。」
2人の片方が細く硬い糸をアサギ向かって投げた。「!!」
今度は逸れなかった。
糸がアサギに巻き付く。糸はアサギを締め付けて動きを封じる。
「う……っく……この…!」
糸に手を伸ばそうとするが頑丈な糸はアサギにもがくことすら許さなかった。全く動けない。
「よし、帰るぞ。こいつを離すな。」
「はいよ。」
アサギの足元に魔法陣が現れた。目が眩むような光が放たれる。
「何する気だ!離せ!!」
アサギが叫んだが、足元から放たれる光はますます強くなる。
(もうダメだ……!!)
足が浮くような感覚がした…。

キーン!!

足元からの光よりももっと強い光が辺りを包んだ。アサギは目をつぶる。浮きかけた足が再び地に触れた。光が止んだ後、アサギはゆっくりと目を開けた。そこにはさっきまでいなかった3人の人間がいた。アサギが見たのは腕を押さえてうずくまっている男とそのすぐそばで立っている男、アサギの目の前に立つ、金髪の後ろ姿だった。
「大丈夫だった?」
その金髪がアサギに言った。
「うん……だ、誰?」
質問には答えず、アサギを助けた人物はアサギに振り返って指先から青いものを弾いてアサギを縛っている糸を切った。アサギは自由の身になったことにも気付かず、自分を助けてくれた恩人の顔をただまじまじと見つめていた。
「え……。き、君、今日の…。」
言葉がつっかかってなかなか出てこない。
「転校してきたばっかの…な、七枝雪って……」
「ええそうよ。」
目の前にいたのは、紛れも無く、今日転校してきたばかりのアサギの隣の席の七枝雪だった。
「くそ…邪魔しやがって…」
男が雪を睨みつける。
「絶対にそっちの思い通りにはさせないわ。」
雪も負けずに睨み返す。2人の間に火花が散った。
「この…」
「待て。」
雪に飛び掛かろうとした男を、もう一人が止めた。
「面倒だ。撤収するぞ。」
「んなっ!!なんでだよ!!いいところだったじゃねぇかよ!もう少しで…」
「今日はもうダメだ。次の仕事がある。それにおまえ、傷を負っただろう。」
「う……。」
男が腕を押さえる。雪がさっき負わせたようだ。
「仕方ねぇ、引き上げだ!」
「! 待ちなさい!!」
雪が止める間もなく、2人の男は消え去った。
雪が2人の気配を探りながら言った。

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