Magic!

□第四話 真夜中の学校探険/前編
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コツ…コツ…

『アハハハハ…アハハハハ…』

コツ…コツ…

それはアンバランスな足を不自然に動かしながら、さも嬉しそうに闊歩していた。

『アハ…アハハ…アハハハハ……』

コツ…コツ…



『今日のお天気はいかがでしょう?』
『そうですね〜途中でにわか雨があるかもしれませんが、問題ありません!爽やかな晴れになるでしょう!だから、ご主人様達安心してくださいね』
メイド服姿のお天気レポーターが言った。
『萌子さん、ありがとうございました。萌え萌えお天気のコーナーでした〜』
二人のレポーターが、テレビ画面からズームアウトしていく。
「今の誰?」
アサギの母が眉間にシワを寄せてアサギに質問した。納豆をかきまぜることに命をかけていたアサギはテレビ画面には目もくれず、
「あ〜、萌野萌子(もえのもえこ)だよ。メイド喫茶出身のアイドル。最近人気急上昇中でさ。オレに言わせりゃ『怒りんぼ探偵怒野』の六ノ宮刑事の方が美人だけどね。よし百回まぜた!」
アサギは豪快に納豆をご飯の上にぶちまけ、かっこみ始めた。
「ふ〜ん、そう…」
母はすぐに興味をなくしたようだ。
「ごちそうさま!!」
ゴトン!と乱暴に茶碗を置いた。中身はもうきれいになくなっている。歯を磨くと、アサギは家を出る。
「よし、今日はいつもよりうんと早いぞ!」
アサギは今までの朝を思い返した。いつも家の扉の前でシアンが立っていて、アサギが扉をシアンにぶつけそうになり、怒られるパターンが続いていた。
「でも今日はあいつもまだ来てねーし!あいつったらいっつも…」
『何喜んでるの?』
アサギはギクっとした。シアンの声だ。
「うへえええ、シアン!?」
やばい、聞かれた…と辺りを見回してみるが、誰もいない。
「あれ…?」
(そうか!いつもいつもあいつがここにいるからついにあいつの思念が張り付いて生き霊化して…)
「おい、アサギ」
レイヤ(瀬戸崎怜夜)がアサギの家の前に来ていた。彼とラースは魔月高校の二年生だ(二人はまだ十七歳なので学校にいないと不審がられるのだ)。この辺は彼らの通学路らしい。
「レイヤ?今さぁ、シアンの声がしたんだけど…」
『これのことか?』
「ええっ、!?」
アサギは仰天した。何故ならシアンの声がレイヤの口から出たからだ。
「え…おまえ、シアン……レイヤ……声…シアン…」
「文になってないぞ。これは変身術の一種で『形態模写』と言われるものだ。今のはその中の『声帯模写』だが、単なる声マネではなくて、本人と全く同じ声が出せる」
アサギはへえ〜と不思議そうに聞く。
「ただこの術を発動するには指を喉にあてるという条件を守らないといけないが」
「え、術に発動の条件とかあるの?」
「ああ。弱い術なら条件なしでも発動できるが。条件として一般的なのは『呪文』だ。他には『象(しょう)』といって、術者が自分の体で古代の文字を象ることによって発動する場合もある。それ以外でもまだまだあるがな」
「そ〜なんだ〜」
「おい!来てやったぞ!!」
ラースだった。後ろにはシアンもいる。
「ああ、来たのかハリネズミ。」
「だから!そう呼ぶなっつってんだろ!!」
「シアン、なんでラースと一緒なの?」
アサギが質問した。
「ラース先輩が誘ってくれて…」
「ラースおまえまたナン…」
「ナンパじゃねぇよ!!学校真向かいなんだから一緒に行ったっておかしくない!」
「……どうせじきにそうする気なんだろ」
レイヤがラースに聞こえないように言った。
「でも先輩、私はアサギの護衛ですし、先輩はレイヤ先輩と組んでるから一緒なんですよね」

「どうしてこうなんの?」
アサギは背後の三人に言った。三人は弁解するように、
「私はアサギの護衛よ」
「オレはこの前のことがあったしシアンちゃんが心配だから」
「オレはラースと別行動がとれない」
アサギはため息をついた。
(この分だと明日もあさってもその後も四人か…)
絶対に寝坊ができない状況になったので、アサギはがっかりだった。
「そういや、次の任務があったよな」
アサギの気持ちなど知らず、ラースがレイヤに言った。
「ああ。魔月高に出る魔物を退治しろってな」
「えっ、また魔物?」
アサギはがっかりしていたのを忘れた。
「そうだ。最近多くてな。『地獄の覇者』が活発的になっているってことだよ。魔物は力をやって暴れさせたり標的となる人間を捧げれば簡単に使役できる場合が多い。もちろん奴らが魔物を使うのは計画の枝葉末節が八割だが」
「そ。今度の奴は真夜中に学校の中をさ迷ってるだけだからまだ実害はねえけど、魔物がいつ凶暴化するかわからねえから早いうちに退治してくれってことだ」
レイヤとラースがアサギに説明する。
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