Magic!

□第二話 魔物退治と潜む影
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「おい本当に出たのかよ。気のせいじゃね〜の?」
「本当だって!!この目で見たんだよ!!」
「びびり野郎が。幽霊なんているわけねぇだろ」
3人の若い男が月明かりの下、神社の鳥居の前に立っていた。
「おかしいなぁ。確かに昨日いたのに」
3人のうちの1人が鳥居の周りをキョロキョロ見回す。
「もういいだろ。帰るぞ。ったく騒がせやがって」
3人は鳥居に背を向けた。
『…ダレヲ…サガシテルノォ…?』
「うわあぁぁあぁぁぁ――――――!!!!!!」


『…神社の境内で若者3人が何者かに襲われました。3人とも外傷はないものの、意識不明の重体です。神社の神主によると3人は神社の鳥居の前にぐったりして倒れており、昨日の朝神社を散歩していた神主が3人を発見しました。警察は3人が何らかの事件に巻き込まれたと見て事件の究明を急いでいます…』

「まぁ、物騒ねぇ」
テレビを見ていたアサギの後ろから、エプロン姿の女性が言った。
「外傷がないのに意識不明だなんてただ事じゃないぜ。それとお母上、おかわり。」
アサギが自分の母に言った。エプロンのシワを直しながらアサギの母は、
「お母上なんて。おかわりは好きなだけしていいけど、もう学校行かなくていいの?」
テレビ画面左上の時刻を見ると、アサギが遅刻せずに学校に行ける時間のギリギリの4分前だ。
「あ、もう行かなきゃ!おかわりはいいや!ありがとね!行ってきま〜す!」
鞄を引っつかんで走って廊下を突破した。玄関のドアをバーンと勢いよく開ける。
「遅いわよ!!」
アサギが見るとシアンが家のすぐ前に立っていた。
そのまま派手に家を飛び出そうとしたアサギはつんのめり、シアンに頭突きを食らわせそうになったが、シアンが手を動かすとアサギは空中でそのまま停止した。
「ドアを開ける時はそんな乱暴にやらないの!おかげでドアに実体を失わせる術をかけなきゃならなかったわ。ちょっと遅かったら今頃大きな青あざが…」
「なんで家の前に立ってたんだよ!てか、シアンにそんな事言われる筋合いない!」
静かに海に飛び込もうとしてそのまま時間を止められたような格好でアサギが言い返した。
「昨日言ったでしょ。私はあなたの護衛なの。それと、そんな事言ったって、いつもそんなドアの開け方じゃドア壊れるわよ。ほら、学校いきましょ。」
シアンがスタスタと歩きながら、アサギに掛けた術を解いた。アサギはそのままぶざまに顔面から地面に衝突した。
「おい待てよ!護衛が先に行っちゃうんじゃ意味ないだろ!」
アサギが鼻の頭をさすりながら急ぎ足でシアンの後ろにつく。アサギの鼻は真っ赤だった。
「ならもっと早く登校の準備をしてね。本当にギリギリじゃない…」
「わかったって。今日は早く行くつもりだったんだけどさぁ、ニュースに夢中になっちゃって。ほら、神社で3人襲われて外傷はないのに意識不明って…」
シアンの目の色が変わった。
「そうよ。そのことなんだけど、もしかしたら近々任務依頼があるかもしれないわ。その事件、魔物が起こしてるかもしれない。」
「えっ、そうなの?」
昨日魔術師に出会ったばかりでまだ魔術関連のことに慣れていないアサギは声が裏返った。
「多分ね。そんな事が出来そうな魔物を知っているわ。しかも事件があった神社はここからそう遠くない。私の管轄になるかもしれないわ」
「でもさ、魔物って、こっちにいるの?それと、そういう事件ってよくあるの?」
シアンは過去の記憶と照らし合わせながら考える。
「いるといえばいるわ。昔からね。最近は魔術師が持ち込んだりするから、以前よりずっと数が増えたの。事件は時々あるけど今度の事件みたいに表ざたになることはほとんどないわ。大体は秘密裏に魔術師が処理するし、人の姿をとる魔物もいるから心霊現象に紛れてしまっている場合もあるしね」
「ふ〜ん…」
「もし私の管轄ならあなたも一緒に魔物を退治しに行かなければならないわ。あなたも決して関係ないわけではないのよ」

その日の学校は、アサギがダンゴマンこと国語の団駒男(だんこまお)教諭に授業中三回も指されたあげく本文をほとんど全部読まされた(アサギ曰く去年一年分のアサギへの恨みつらみ)以外は何事もなく、平穏に過ぎていった。
「あのさ、もし任務依頼が来たらさ、オレは一体どうしたらいいの?」
帰り道、国語教諭へのグチを散々ぶちまけてからアサギがシアンに言った。シアンは上の空で「そうね」「もっともだわ」などと適当に相槌を打っていたが、その話題にはちゃんと意識をもとに戻した。
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