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現在の御礼:ロー





蝉の声静まる闇の中

優しさと不安が入り混じって紡いだのは

ただただ淡い夏の夜の夢



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ロマンチスト
夢紀行
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じっとりと首に張り付く髪の毛の違和感で目が覚める。
ぼんやり霞む視界には黒。
ああ、まだ夜中だと理解するのにかかった時間は、長い溜息をつき終えるに十分すぎるほどだった。

ふと天井を見上げれば、クーラーの電源ランプが消えている。
眠る前にセットしたタイマーと、カーテンの向こうから差し込むやわらかい光に、今が明け方の少しだけ前だとわかった。
時計を見るまでもなく、あと数時間で起床の時間だ。
まるで冷えたペットボトルに流れる水滴のように額を走る汗を感じながら、さて再度クーラーを入れるべきかとしばし頭を悩ませる。

電気代、数時間の睡眠、空調による体調の変化、快眠への欲求…。
寝ぼけているのか、それともこれが人の正常な思考か。
ぼんやりと頭の中で秤にかけながらも、左手はゆっくりと枕元のリモコンへ手が伸びた。

コツリ

指先がリモコンでもない、枕でもない、なにやらやわらかく暖かいものに触れた。
重たい頭を傾けてみれば、大きな人間の体が横たわっている。

「…は?」

ああそうだ、昨夜はローが泊りに来ていた。
それはハッキリと覚えているし、なにやら手術続きで疲労困憊であった彼は珍しく夜の情事を求めることなく、ベッドに体を沈めたことも覚えている。
しかし二度見するほどに驚いたのは彼の存在そのものではなく、彼の今現在の状況である。

「…え、なんで裸?」

夢の世界へと舞い落ちる前は確かにTシャツを羽織り、ジャージを履いていたはずだ。
なんなら腹部の上に軽くタオルケットさえかけていた。
それが今はどうだ。

いわゆるパンツ一丁ではないか。

「…」

いやいや。
そう声が出かかって、彼の心地よさそうな寝息に思わず口をつぐむ。

盛大にあらわになっている医者にそぐわぬ体中の刺青やら、なんでその柄を選んで履いているのかといわんばかりのトランクスやら、突っ込みどころは満載ではあるが
取り急ぎクーラーのリモコンを探し当てて電源を入れた。

「暑いならつければいいのに」
…クーラー。

無意識に服を脱ぐほど暑いのに、目を覚ますことのできないくらいに疲れているのか。
そこまで考えて、足元にぐちゃぐちゃに追いやられているタオルケットを手繰り寄せる。

少しずつ温度を下げ始めた部屋で風邪をひかないよう、そっとやわらかなそれを掛けながら
明日は少しでも栄養価のある朝食を作ってあげたいなと、冷蔵庫の中身を思い出しながら体を横たえた。


どんなに疲れてても隣で眠ってくれる恋人に


夏のそれに似た熱を感じながら。











「あ?服なら夜中アチーから自分で脱いだ」

「は?」

「のどが渇いて夜中目が覚めたんだよ。クーラー切れてリモコン見当たんねぇからとりあえず脱いだ」

「とりあえずて」

「お前腹出して寝てたぞ」

「うっさいな!てかタオルケットかけてよそれなら!」

「あー、てか朝からこんな食えねぇよ…お前なに考えてんの?だから太んだよ」

「…ッッ!!」



「おい、コーヒー」

「自分で淹れろ、このハート柄パンツ野郎がぁぁぁ!」





***END***













赤旗屋から電話だ。



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