神の扉
□戦いの幕
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金蝉は今し方天蓬から聞いた話に唖然とした。
悟空は今部屋にはいない。
この話は彼には聞かせられない、聞かせてはいけない。酷すぎるのだ。
「可能性としてはかなり高いと思いますよ。急増出陣、補いきれなくなった軍。そこに現れた闘神
――タイミングが良すぎませんか」
これら全ての元凶が李塔天の仕業…。そう天蓬は言いたいのだろう。
「―――確かにな」
「李塔天は天界上層部に怨みを抱いています。彼の最終目的は定かではありませんが、今の地位を脅かす―――――
闘神となりうる『悟空』の存在を本気で消しにかかるでしょうね。哪吒を用いてでも―――」
邪魔な存在は消す。それが李塔天。
もし、現実になればあの子達は───
目に浮かぶのは悟空と春の笑顔。
無垢で今を全うに生きようとしている二人の姿。それが壊れてしまうなんて誰が想像できるというのだ。
「友達なんだッ!!」そう笑顔で自分に言ってきた悟空。その友達が自分を殺しに来るなんて、こんな酷な話を伝えられる訳がない。
春も春で自分の弟が、少なからず好意を持っている相手を殺したりなんかしてしまえば…、考えるだけで恐ろしい状況が目に浮かぶ。
――――俺達で何とかしないと…、金蝉は心に決めた刹那、
「……それ
なんだよ?」
しばしの沈黙を破ったのは、聞慣れた声。バッと扉を振り返る二人の視線の先には、この話を一番聞いてはいけない人物だった。
「――――!?悟空……!!」
顔を引き攣らせ、扉の前に立ち尽くす悟空はその小さな、口を開いた。
「なんだよそれ。俺のそんざい消すって、…ウソだよね。―――哪吒が俺をって」
そう言った途端、バサバサ…っと手に持っていた数冊の本を床に撒き散らし、部屋出て走り去って行く悟空。
「――――悟空!!」
呼びかけにも振り向かない。
「あのバカ…!!」
「待ちなさい悟空!!」
ウソだ、―――――哪吒がそんな、
――だって俺達!!!
向かう先はナタクが居るであろう、あの大広間。
会って、確かめたい…!
悟空はがむしゃらに、廊下を走った。