神の扉
□消えたあの人
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三神が任務へ出てから一ヶ月以上が経った。任務期間が終了した今、彼からも、軍からも連絡はない。
一ヶ月前…
「はぁ?長期任務――ッ!?」
私は部屋で、いつもの様に資料を整理していると、三神が思い出したかの様に長期任務が回ってきた事を打ち明けた。
「はい…」
近所迷惑だろー。と顔に書いている彼は小さな声で肯定した。
「………で、内容は?」
「えっと…竜安大王の討伐で…その事後処理などで約一ヶ月かかるとの事です」
「はぁ――竜安ていったら、結構な強豪じゃん…」
「すいません…」
「仕方ないじゃない。まぁ三神がいないと私は淋しいけど、帰り待ってるから」
「ありがとうございます…」
そう言うと三神は笑顔になる。
「最近春様はあの金蝉童子の保護下の少年にお熱ですからね。私は寂しかったですよ。久々に春様に優しい言葉を……」
「こらこら!お熱じゃないから!!てかお熱って…古ッ!!」
精一杯突っ込んだ私は疲れて、椅子に座りながら机に頬をつけうなだれた。すると三神が寄って来て、私の頭に優しく手を置いた。
「朝起きて下さいよ?」
「わかってるよ」
「ちゃんと寝る前はトイレに」
「はいはい」
「くれぐれも無茶はしないで下さい」
「――うん…ってお前は母親かッ!」
笑いあっていつものように見送った。その日から1ヶ月の月日が流れた。もう帰って来てもいい時期なのに連絡のひとつ、入る頃なのに、
――――――三神から連絡はなく、彼は行方不明となった。
天蓬や大将に聞いてみたが、まだ連絡が取れないらしい。任務に行ったのは彼一人だった為、他に連絡しようもないのだ。
隊内の殆どの者が三神の無事を諦めかけていた時、彼女だけは信じていた。
三神の帰りを───
そしてどうすればいいか考えて考えて、ある可能性が閃いた。観世音菩薩なら知っているかもと。
確か三神は観世音菩薩の世話係も請け負っていた筈。
そしてその日の夕刻、私は一人観音の部屋を訪れた。部屋に入ると観音は正面に座り、書類に目を通していたが私が入って来た事を知り、視線をこちらに向けた。
「忙しい中申し訳ありません。少しお伺いしたい事がありまして参りました」
「頭を上げろ。──で…用件は何だ?」
頭をあげると凛々しく鋭い眼光に畏縮した
だが気を引き締め背筋を伸ばした。
「はい、捲蓮大将の部下、三神の事なのですが…、何か情報がないかと…。
上司に聞いても何も掴めなかったもので…」
「三神…か」
「!…ご存じなのですか?」
「ああ。色々世話になったからな。本当に知りたいのか?」
目を細くし、試す様な視線を向ける観音。
「………どういう意味ですか…」
嫌な予感に、冷汗が流れた。何でそんな聞き方をするんですか。
「どうなんだ。知りたいのか、知りたくないのか」
観音の有無を言わさぬ目に圧倒されつつも、私は「知りたい」と答えた。
「いいだろう…。三神はな、
────死んだよ」
世界がぐるぐる回る感覚が襲い、その場に崩れ落ちた。
そんな事ってないんじゃない?死んだなんて………
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「やだ…」
「本当の事だ」
「――なん…で…!?」
自然と涙が溢れ、視界が歪んだ。