神の扉
□夜桜の下
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お酒を片手に金蝉の部屋へ入るとみんな居た。
天蓬が大きなシートを持っていたので、「どこか行くの?」と聞いたら、花見をするのだと教えてもらった。
……なんて良いタイミングなんだろう。
もちろん私も参加する事になり、そんな私が持つ大量の一升瓶を目敏く見つけた大将は、
「さっすが俺の部下だッ!」
大喜びでそう言って髪をぐしゃぐしゃに撫でまわされた。
「僕の部下をいじめちゃダメですよ」
次にはぐいっと私を引っ張り天蓬の腕の中に収められた。
「ちょ…二人とも、」
睨み合う二人におろおろしながら金蝉にSOSの視線を送った。
「何そこで張り合ってんだ…、行くぞ」
呆れながらも気付いてくれた金蝉が助け船をだしてくれた。
「なぁ、早く行こーぜ!」
べり、と悟空に天蓬から離された私は、悟空に引っ張られながら走り出した。酒瓶はキッチリ天蓬に預けて。
「ほらみんな早くッ」
部屋から出る直前、悟空に引っ張られながらも私はそう言ってフェードアウト。
「やられちゃいましたね」
「最大の敵はあのチビか」
「お前ら何ほざいてんだ」
「悟空、う…はやい!!」
「え、ああ!!ごめん!!大丈夫かッ」
「な…なんとか。」
ぜーはーと息を切らす私を見下ろす悟空は、飄々と息一つ乱れないのは羨ましい限りだ。
「てゆーか、いきなり走ったらびっくりするじゃない。…どうしたの?」
「え……なんか…その、わ…笑わない?」
歯切れの悪い会話。悟空にしては珍しく、両人差し指の先をちょんちょん合わせながらこちらの様子を伺ってくる。
「笑わないよ。だから言って?」
「―――――て、天ちゃんと引っ付いてたから…」
ん?え、もしかして…
「それだけ?」
「うん、それだけ。」
天然タラシ、み――――っけた!!
意中の相手にそんなん言われたら…私の顔はたぶん今真っ赤だろう。とりあえず手で覆い隠して、悟空に見られないようにするが、
……ヤバい、めちゃくちゃ嬉しい。
「それに…春がなんだか悲しんでるように見えたから」
「…私、そんな顔してた?」
「ううん。笑ってたけど、俺の好きな笑顔じゃなかった。」
……野生の感かな?案外悟空は私の事、見てくれてんだな。
そう思ったら恥ずかしいじゃなくて愛しい気持ちになって、
「悟空ッ」
「うぇッ!?」
抱きついて、感謝の意を込めて頬にキスを送った。
「ッ!?な、なに…」
「あはは!!悟空顔真っ赤ッ。形成逆転だあ―――――ッ」
それだけ言って私は外へ向かう道を走った。
その姿を見ていた悟空が…
「なんだ?コレ……胸が苦しいや…」
ぎゅーっと胸を掴んでいたのを私は知らない。
―――――――――……
全員が揃い満開の桜の木の下、風が肌を撫で、桜を撫で舞い散花吹雪舞う中、他愛もない話で楽しい時間を過ごす私達五人。
「…お前達実はヒマなんだろ」
「ヤですね、人聞きの悪い」
「ん…でもねぇ、」
あながち外れていない事を言われ、なんとなく大将をチラっと見る。
「ま、ヒマっちゃ―――ヒマかもな。
ここんとこ下界への出陣は闘神軍まかせで、俺達事後処理班みてーなモンだし?
―――ホラ、ちゃんと呑んでっか、金蝉?」
そう言い金蝉のおちょこに酒を注ぐ大将はなんだか嬉しそうだ。あれ?もう酔ってる?
「バッ、やめろ。勝手に注ぐな!!」
「あはは、金蝉もしかして酒弱い?」
「そ―ゆーお前は未成年だろ」
「失礼ね。金蝉と年変わんない筈よ?見た目ちっこいケドさ」
はい、爆弾発言にみんな惚けてます。
「驚いてる驚いてる!」
あはは、いつもそうなんだよね。こうやってリアクションを見るのは案外好きだったり。
大将なんて持ってたお猪口手から滑り落ちてるのにそれに気づいてないし。
そんな私の様子を一人眺める者がいたが、この時気分良くお酒を飲んでいたのもあり視線に気づく事はなかった。