神の扉

□気持ちの底
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私はだんまりを決め込み俯く悟空を先頭に天蓬、大将と一緒に付いて歩いていた。

それは哪吒が帰還したとの情報で意気揚々と出迎えた時の事が原因。


悟空が哪吒に声をかけた瞬間見せたあの子の嬉しそうな顔。だがふいに父上が哪吒を引き寄せた瞬間から雰囲気が変わった。


「――――哪吒?なたくっ!!俺だよ、忘れたのかよッ?…哪吒ってば!!なた」

バタン!

無残にも悟空の声は哪吒に届く事なく、こちらを見向きもせず扉の音と共に彼は去ってしまった。
















……悟空も心配だけど用事があると皆に告げて別れた私は、哪吒の元へ向かった。

天蓬も捲簾もその時、悟空の事は任せろって言ってたし、それに悟空には金蝉がいるからね。

そう自分に言い聞かせ、哪吒の部屋へと急いだ。




――――――――……



―――部屋の前に着いた私は、いつ見ても冷たく頑丈な扉を二回ノックをした。だが中から返事はなく、静寂が辺りを包む。

「哪吒…入るよ?」

居るのはわかっているのだが、向こうからは返事は返って来ない。ふとノブを捻ると鍵はかけていないらしく、私はそのまま気にせず部屋に入った。

案の定中は暗く電気すら点けていなくて、そして啜り泣く声が耳に入った。

その源は簡素なベッドの上に俯せになり泣く弟。

私はベッドに座り哪吒の頭を優しく撫でる。














「哪吒…何で泣いてるのか、私に話してくれない?」

そう努めて優しく聞くと、哪吒はゆっくりと顔を上げた。

彼の顔は、涙でぐしゃぐしゃになり、目は真っ赤に腫れていた。

部屋に戻ってからずっと泣いていたのだろうか。

胸がツキンと痛んだ。



「姉ちゃ……、俺……ど…したら…ッ」

しゃくりをあげながら、途切れ途切れに話す哪吒を見て思わず抱き締めると、彼も私の背中に手を廻し、ギュッと服を掴んだ。
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