神の扉

□願いたい幸せ
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―――――――……



「――なあ金蝉―、人がいっぱいいるよ。何があんのかなぁ」

窓にへばり付く悟空をふと見、また新聞に視線を戻す金蝉。

「明後日に宴がある、その準備だろう。天帝の生誕祭だ」

「おまつり?」

首を傾げ、興味ありげに聞いて来る悟空に金蝉は、

「祭りったって夜店は出ねぇぞ。お前はここで大人しく待っ…」

釘を刺そうと言いかけたが、視線を悟空に戻すと……













目を輝かせ、「連れてって」と全身で表現する悟空の姿があった。犬耳と尻尾は幻影だろうか……。

それを見た金蝉は何も言えなかった。

その時、部屋にノック音が響いた。

「―――誰だ」

「僕ですよ」

扉を開き、覗かせた顔。それを見た瞬間、悟空は「天ちゃんだぁ――!」喜々とした表情で、天蓬に走り寄る。

「あはは、悟空久しぶりですね」

じゃれあう二人に金蝉は、天蓬の歳相応ではない行動に、先程よりも呆れ果てていた。

「今日はどうした」

金蝉が問うと、天蓬は「そうでした」と言いながら両手を合わせて笑顔で、

「今日はお客さんを連れて来たんですよ」

「………客だと?」

「入って来て下さ―い」

天蓬の呼び掛けに準じて部屋に入ってきたのは











「……春―――ッ!!」

悟空が名を呼びながら彼女へ駆け寄る。それに応える様に彼女も駆け寄る。

「何で春がここに来たんだッ?」

「あはは、今日は金蝉童子にお礼を言いに来たんだぁ」

「礼?」

身に覚えのない事に、金蝉は眉をしかめた。

「弟のナタクが悟空にお世話になってるみたいで…だから悟空の保護者である貴方に…」

「俺は保護者じゃねぇ…」

「え?」と首を傾げる私に天蓬が、「アレは照れ隠しなんですよ」と耳元で言ってくれた。

「オイ、何こそこそしてやがる」

――――うん、納得。ちょっと顔赤い金蝉童子の顔に、私は思わず笑ってしまった。

それじゃあと悟空に向き直り、「これからも仲良くしてあげてね」と、そう彼に言うと嬉しい返事が返って来た。
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