神の扉
□初めての友達
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――――――私の太陽
黄金の瞳の弟と――――――そして…
「ただいま――」
「あ、おかえりなさい」
哪吒と別れ、自室に戻ると三角巾を被り、シンプルなエプロンをつけて部屋を掃除する三神の姿があった。
「なんか…、家政婦っぽいね」
「誰がそうさせてんですか。貴女が散らかさなかったら、私もこんな事しませんよ」
三神からのダークスマイルが私に突き刺さる。コイツ…たまにこう有無を言わさぬオーラを出すのよね。
「あぁ……ごめんね?」
私が素直に謝ると三神は「もう慣れました」と笑った。
実はこの笑顔が大好きだったりする。父上の事や、他の天界人に色々言われた後の彼の笑顔は、何故かホッとする。
三神、彼は軍人だ。性格は温厚でなかなかの気配り上手。だが一応あの暴れん坊将軍、捲簾の部下らしい。
このヘタレが本当に活躍してるのか、三神の仲間の一部に聞いたのだが……
いざ戦いになると三神は無口になり黙々と戦いを済ませるかなりのスペシャリストだとか…。
まー見た事ないから判んないけどね!私は見た物しか信じない主義だもん。
ひとり自己完結してソファーの背もたれに身体を預け、自分よりはるかに身長の高い、似合わないエプロンを身に付けた三神をじーっと見上げていた。
すると、その視線に気付いたのか三神が振り向いた。
「何見てんですか、何か付いてます?」
「いや……あのさ、前から言おう言おうと思って言えてなかったんだけどさ、
私も三神と同じ軍人になる」
「…………はぁッ!?何言ってんですか!?貴女はまだ子供…」
「子供じゃねェ。もォ大人」
そう言い、目の前まで詰め寄る彼をやんわりと押し戻して落ち着かす。
「そんなちっこいくせに?」
「誰に向かって物言ってんのよ。私はまだ成長期なの」
「その時点で子供じゃないか」
「もぉ!」
頬を膨らませて怒る私にケラケラ笑う三神。
やはり彼にとって私はまだまだ子供なのだろう。
だけど私はなるって決めたんだ。
……実際身長は低い。この前測ったが、150cmも危うかったけど!哪吒ともそうたいして変わらないけど!!
「で…、そもそも何で軍に入るんですか?」
腕を組み呆れた顔で見てくる三神は、いつの間にか私の隣に腰掛けていた。
「―――哪吒を守りたい。異端だとかもう言わせない為にも。それに私はナタクの姉だから…」
「───解りました。だから…、泣かないで」
「私ッ…それしかできないから…!だから私が強くなって誰に何もあの子の事を言わせない……ッ!!」
「大丈夫、判ってますよ?」
そう言いながら私の頭を撫でる三神は、
「頑張りましょうね?」と、優しく微笑んだ。
それから死に物狂いで神力、剣術、体術、戦術を学び、着々と頭角を表していった。
そして幾年が過ぎ、私は無事軍入隊が決まり、だがそれと同時に哪吒が闘神太子になった。
元々、黄金の瞳で人から蔑まれていたのに、闘神になった事でより恐れられるようになった。
まだ幼い子供には辛い仕打ちだった。命を落とす危険があるのにも関わらず誰も助けてくれない。
必要とされていないのか、只の道具なのか…
苦しむ弟を見るだけで胸が張り裂ける感覚にかられるが、哪吒は私の前で笑顔は崩さなかった。
頼ってくれている。そう理解した私は、支えになれるように、帰ってきたらいつも傍に居た。
それで少しでも気が休まるなら……、そう信じて。
幾日もそんな日過ぎたある夜、哪吒は久しぶりに満面の笑顔を見せながら、
「姉ちゃん!俺……俺に…友達ができたッ!!」
信じられないといった顔で…だが至極嬉しそうに話す哪吒の姿があった。