『ナルト君、これから君には弟が迷惑をかけるかもしれない』

昔、イタチ兄ちゃんにそう言われた。
うん、その通りだと俺はその後すぐ思った。

「ナルトは僕のだよ!」
「あ゙ぁ゙っ!?ナルトは俺のだよ!」

何時も何時もそう言って喧嘩する二人。嗚呼、イタチ兄ちゃんそういう事を言ってたんだなぁ…と俺は理解した。それは成長した今でも何も変わってない。

「お前何ナルトに触ってんだよ!」
「何でナルトに触るのに君に許可を取らないといけないの?」

朝から俺を挟んでずっと言い合いしてる。はぁ…早く学校に着いてくれないかな。今は何故だか教室が離ればなれで良かったと痛感した。

「あ…もう学校に着いたってばよ!いい加減言い合いすんな!」

取り敢えず二人を止める。サイとサスケはお互いを睨んだままだが、その場は何とか抑えれた。

「じゃあまた後でな」

そう言って俺は教室に行った。やれやれ…という感じだった。何でもっと仲良く出来ないんだよ。ああ、イタチ兄ちゃん。もっとサスケを周りと協調出来るように教えて下さい。

「朝から暗い顔してんなー」
「キバ!」

よっ!とキバが挨拶をしてくれた。俺は一気に表情が明るくなる。しかもキバの所にはシカマルも居た。

「シカマル!おはよう!」
「おはよーさん。何だよ暗い顔してんな、と思ってたら案外元気じゃん」

シカマルは今日もダルそうだけど、ふ…と優しい笑顔を向けてくれる。

「へへっ!二人の顔見たら元気出たってば!」

そう言うとキバの腕が伸びて来た。そして俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。

「だーかーら!そんな可愛い事言うなって!」
「ちょっ…!キバ…!」
「本当にお前心臓に悪いわ…」

どこか楽しそうな二人に俺も何だか楽しくなった。この教室に居る時は誰にも束縛されない俺だけの時間だから。俺はこの時間を大事にしたいと思った。
けどその一時の時間は突然の訪問者により崩れ去った。

「ねぇナルト」
「うわっ!?サイか…。びっくりしたってば」

サイが突然現れた。俺は咄嗟にキバとシカマルから距離を取った。サイを伺うとさして気にした様子は無く、にこにこと笑っている。

「ナルトにお願いがあるんだ」
「な…何だってば?」
「放課後美術室に着いてきて欲しいんだ」

俺は目をぱちくり、とさせた。

「美術室…?」
「うん。入部はしないけどここの美術室はどの程度なのかなって。丁度サスケは今日委員会らしいからナルトと一緒に行きたくて」

駄目…?と首を傾げられてしまったら最早俺に断るすべは無い。サスケが知ったら怒りそうだけどサイが何とかするだろう。

「いいってばよ…」

俺は頷いた。

「そう。ありがとう。じゃあ放課後迎えに来るからね」

サイはそのまま教室を出ていった。

「美術室ってあいつら居る所だぞ、あいつと折りが合わないんじゃねぇか?」
「あ…」

俺は大事な事を忘れていた。




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