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□雪やこんこん
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「えっと、おしょうゆとノリと、きなことお砂糖でいいんですよね。」
 持ってきた材料と手帳を交互に確認する颯姫に、蒼衣は頷いてやる。
「大丈夫だよ、ありがとう。」
「颯姫君、冷めない内におあがり。」
「はい!」
 いそいそとコタツに戻る颯姫の前に、きなこと砂糖を混ぜた小皿を差し出す。
 蒼衣もお手本としてきなこ餅を作り、神狩屋は不器用ながら磯辺焼きをこしらえる。
「いただきまーす。」
 3人揃ってきちんと挨拶し、ホカホカの餅を口に運んだ。
『あら、おいしそう。』
 危うくきなこを吹き出しかけた。
「な、何ですか……?」
 餅に夢中の颯姫には気付かれない程度に声をひそめ、蒼衣は己の肩で頬杖をつく風乃に問い掛けた。
 風乃はニッコリと微笑んで言う。
『困ってるのよ、〈アリス〉。』
 それならもっと困った顔をしてほしいが、とりあえず相槌を打って先を促す。
『私じゃどうにもならないの。雪乃が……。』
「雪乃さん?」
 言われてみれば、ここに居るのは風乃だけで雪乃の姿は無い。
 まさか、見回り中に何か起きたのだろうか。
「雪乃さんがどうしたんですか?」
『とにかく、外に。』
 相変わらず愉快そうなのが引っかかるが、他人の不幸を喜ぶ風乃だからと心配になりながら席を立った。
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