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□〈異端〉狩り
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困惑と不審の混じった視線の先で、蒼衣は気まずそうに肩を竦めた。
「ほら……明日は土曜日だから、友達の家に泊まるって言えばおかしくないし。
ただ思い付くのが遅くて変な時間に来たら、雪乃さんもういなかったんだけど……。」
今度の〈泡禍〉は大きくないが、やや長く続いている。
故に皆が緊張するのは良い傾向なのだが、蒼衣だと鬱陶しくて仕方無いのは、私情が入りすぎだろうか。
それとも、元を絶ったと思っているためか。
「……一応、さっきので終わりだと思うけど。」
〈悪夢〉の底など見通せないので、尽きたかどうかの見定めは感覚に頼るしかない。
蒼衣の〈断章〉がいちいち使えれば話は別だが、なるべく秘密裏に多数を助けようとする〈騎士団〉が、いちいち〈保持者〉に手をかける訳にはいかない。
最終兵器のような扱いが気に喰わないが、〈断章〉の性質の問題なのでどうしようもない。
そんな雪乃の妬みなど知る由も無く、蒼衣は気遣わしげに尋ねる。
「でも雪乃さんの事だから、今夜は徹夜するんでしょ?」
「当然よ。まだ油断できないわ。」
「うん……だから、眠気覚ましに話し相手になるよ。」
「……あなたと話す事なんて無いわ。」
いつの間にか定位置となっている席に腰掛けると、蒼衣の隣の、やはりいつもはいない人物に意識が移った。