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□気紛れなんて言わせない
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こいつは一体何をしたいのだろう。
「お姫様はこんなトコ来た事無いだろ。」
なんて言ってゲームセンターに連れていかれ、ファーストフードで食事させられ……これじゃまるきり放課後デートじゃないか。
「おたく、何がしたいわけ?」
何度問うても、口元に笑みを浮かべるだけ。
それが腹立たしくて帰ろうとしても、気配を見せるとすぐ腕を捕まれてしまう。
「観たい映画ある?」
「おたくと観たい映画があったらそれだけで感涙するわ。」
始終吐いている毒にもへこたれず、櫻井流人はまた歯を見せて笑う。
「あんたの涙、見てみたいな。」
「あたしは泣かないわよ。」
「感涙するっつったじゃん。」
「いい加減にしてちょうだい。皮肉が分からない程馬鹿じゃないでしょ?」
馬鹿だけど、そういう馬鹿ではない。
……ああ、また捕まれた。
「あんたがオレを嫌ってるのは知ってるけど、今日はもうちっと付き合ってくれよ。」
笑ってる。
ただし、口元だけ。
いつもと違う彼の様子に気付いたのは、その時だった。
「……ねぇ…」
その矢先、
―――♪
櫻井流人の携帯が、電子的なやかましいJ-POPを奏でた。
「……。」
櫻井流人は苦い顔で画面を一瞥すると、電源ボタンを押した。
「彼女からのお誘いじゃないの?」
そのままどっかに行けばいいのに、と思ったが、櫻井流人はぐいっと腕を引いた。
「今日は、いいんだよ。」
掛けてくんなっつったのに……と呟く表情は、やはり苦い。