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□怪物の悪夢
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「うるさい。消えて。」
「つれないわね。可愛い雪乃。」
 訳知り顔でくすりと笑み、風乃は残滓も残さず背景に溶け、見えなくなった。
 ふう、と苛立った溜め息をつく。
 しかし吐き出しきれないわだかまりを誤魔化すように、ぐしゃりと胸元を握り締めた。
 ……いらない。好意など、愛情など。
 怪物になると決めた雪乃には、そんなもの受け取る事も与える事もできない。
 雪乃は誰も愛さない。
 誰にも、愛してほしくない。


 だから雪乃は、「嫌い」だと言う。


 誰も近寄らないように。
 自分に言い聞かせるように。
 私は、あなたが、嫌いだと。


 面と向かって嫌いだと断言されて良い気分になる者はまずいない。そうして相手も雪乃を嫌いになる。
 そうすれば雪乃は、怪物でいられる。





 ───だから、どうか、


 私の事を好きだと言わないで。


 嫌いだよ、と言って。





 −END−
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