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□〈異端〉狩り
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 空気まで眠っているような深い夜。
 その静かな闇を騒がす真っ赤な炎が消え、辺りに平穏が戻る。
「…………。」
 景色に溶け込むような漆黒と、一際目立つ純白を合わせ持ったゴシックロリータの衣装を翻し、雪乃は不機嫌そうに道を行った。
 きつく留めた包帯はワンポイントとして、退廃的なイメージに一役買っている。
 おとなしい音を立てて仕舞ったカッターナイフも、まるで命を与えられた人形のように現実感の無い雪乃の武器にふさわしい。
 人々に知られぬ裏社会で闘う、人外のモノ。
 コツコツと容赦無く立てる靴音さえ、聞く者はいない。
 そうして非日常を生きる〈騎士〉は、とうに沈黙した店のベルを鳴らした。
「あ、お帰りなさい!」
 途端、違う意味で深夜らしくない明るい笑顔に迎えられた。
「……起きてたの?」
「はい、雪乃さんが出ていったと聞いたので。」
「……そう。」
 殊勝な心掛けだ、とは言わずに奥へ進むと、颯姫以上にこの時この場に似合わない人物に遭遇し、無防備に唖然としてしまった。
「あ……雪乃さん、お帰り。」
「……何で、白野君達が居るの?」
 日常を重んじ、何も知らない大多数と同じくすやすや眠っているはずの蒼衣が、まるで放課後のように座っていた。
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