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□アリスの夢
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 4種類のマークと例外を含む54枚のカードだとか、
 天運と立方体の導きによって歩みの変わる地図だとか、
 まさに白黒をはっきりさせるために格子状に区切られた盤だとか、
 そういう小道具もあるにはあった。
 だが、彼女と勝負するには短期決戦でなくてはならない。
 故に、拳を交えるこの競技に至ったのだ。


「「じゃんけんぽん! あっち向いてホイ!」」


「わー! つい向いちゃいましたー!」
 普段は長所である素直さが仇となっている颯姫は、何度目か分からない絶叫を上げた。
 颯姫はもちろん相手の蒼衣も、そろそろ両手が埋まるかな、ぐらいにしか思っていない。
 神狩屋などは途中からでも数えていそうだが、決して口にはしないだろう。
 当然雪乃は関わろうともしていない。
「ところで、これって罰ゲームはあるのかい?」
 思い付いたように神狩屋が言う。
 颯姫は首をかしげる。
「ありましたっけ?」
「いや、無いよ。」
 暇潰しに始めただけだから、と蒼衣。
 夕方の見回りも終え、大通りから外れた店に客がいようはずもなく、夜までの時間を持て余していただけ。
 そして颯姫へのルール説明に気を取られていたら、罰ゲームなど考える余地も無かった。
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