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□それは、ごくありきたりな
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 ちきちきちき、


 軽い音を立てて刃を繰り出し、目線を机上の左手に落とす。
 ぴたりと刃を当て、
 そのまま横に、

 ・・
 すー、


「……。」
 何の抵抗も無くそれは───席替え用の番号を記したコピー用紙は、綺麗に分断された。
 明日のLHRで行う席替えに備えてこの作業を教師から頼まれたのは、蒼衣が今日の日直だったからだ。
「ついてないなー、シラノ。」
と敷島が揶揄し、佐和野がいつもの語り口で、
「例え敷島が日直だったとしても、先生が頼むのは白野の方だろう。」
などと言いながら、二人は下校していった。
 敷島達は帰ったが、教室には他の生徒がいくらか残っていた。
 勉強する者、お喋りに興じる者、荷物の整理をする者。
 そういった近いさざめき以外にも、廊下から、校庭から、放課後の喧騒が耳に入る。うるさくはない。けれど静かとも言い難い環境。
 かさり、とコピー用紙を折り畳む。番号を書く時にマス目代わりに、半分のまた半分のと一旦は折ったものだが、カッターを入れるにあたり改めて折り直す。
 こういう事をすると敷島にマジメだ何だと言われるのだが、これくらい誰でもやっている事ではないのか。
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