坊ちゃんの記録U
□【敬礼】
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「おかえりなさいませ、ご主人様!」
ドアを開けると、満面の笑みで出迎えたリウがそう言って一礼してきた。
「ただいま」
素っ気なく言い放ち、出された手に持っていたカバンを手渡す。リウはそれをやはり笑顔で受け取り、ぎゅっとそれを胸に抱きしめながら更に俺に言った。
「お食事になさいますか?それともお風呂に入られます?」
どうしようかと考えていると、目の前に立ったリウが意味深に微笑んで。
「それともー、僕にします?」
などと寝ぼけたことを言ってきた。それを冷めた目で一瞥して横を素通りしようとすると。
「無視はひどいですー!」
と言って、後ろから覆いかぶさってきた。
「ちょ、重い!!」
「ご主人様のためにー、お掃除もきちんとしておきましたしお食事とお風呂の用意もしたんですよ?」
雇われてるんだから当たり前だろ!と思いながら、腰に回された手を解こうと躍起になる。するとリウは、俺の耳元に口を寄せて囁いた。
「ご褒美が欲しいです、ご主人様」
だから雇われてるのにそんなものあるわけないだろと言おうとして。
「お願いします、フィルさん」
「〜〜〜お前っ!」
肩越しに振り返って、目を見て後悔した。
「フィルさん」
その笑顔も、その声も、名前で呼ぶのも、全部。
「…ズルい」
「ふふふ、知ってます」
嬉しそうに言うリウに抱き締められながら、俺は観念してその身をリウに委ねたのだった。
***
敬礼一瞬(笑)。というか単純にお辞儀ですかね…(汗)。主従ですが違和感がない…。立場逆転バージョンも書いてみたいなー。