ドラゴンボール

□空の約束
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晴天の青空を見上げて、ブルマは高く両腕を掲げた。


「あ〜っ、いい天気ねぇ!」


今にも足が地面を離れて、舞い上がるのではないかと思う程。

盛大に腕を伸ばす。


暖かい日差しがポカポカと地を温め、太陽に晒された衣服が気持ち良く香った。




「ねぇ、私も飛んでみたいわ!」


手の平を太陽にかざしたまま、ブルマはベジータを振り返った。


ベジータはと言うと、そよそよと黒髪を風に好きに弄ばせながら、ゆったりと木の根本に腰を降ろしている。


「貴様には無理だ。」


一刀両断。


「なんでよ〜!あんた達だけ飛べて、私が飛べないのってズルイじゃない?」


また無茶苦茶言いやがって。
と、ベジータは小さく溜め息を漏らす。


「貴様らも飛んでいるだろう。ジェットなんとかとやらを使えばいい。」


そう言って、ベジータは取り合わない。


「んもー!!そうじゃなくて!身体一つで飛んでみたいじゃない!」


ベジータが片眉を上げる。




「プールみたいに囲まれて無いし、機械を操縦する煩わしさもないわ。」


ブルマはその青い瞳を、更に澄んだ青い空へと向けた。



「きっとすっごく気持ち良いわよ!」


笑顔で日差しを浴びる。


「重力にも囚われずに、ただただ空を泳ぐの。」


そっと、伸ばした手で虚空を掻いた。


「際限ない世界で自由に浮かんで。」


眩しさに、涙が滲んだ。


「ねぇ、きっと、素敵よ?」


もう一度、ベジータを振り返る。




「ふん、くだらんな。」


視線の先に彼の姿は無かった。

代わりに、頭上から声が降って来る。


「ベジータ…。」


「だが、悪くない考えだ。」


そう言って、彼の手がそっと差し延べられた。


ぽかんとブルマはそれを見上げる。

太陽を背負った彼は酷く眩くて、目を細めずにはいられなかった。


そして思わず伸ばす、先程まで頼り無さ気に空を切っていた白い腕。


その華奢な手を、壊れ物を扱うかのように優しく取り、ベジータはゆっくり高度を上げた。


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