ドラゴンボール
□てとてとて
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うららかな晴れの日の昼下がり。
チチは産まれて間もない我が子をあやしていた。
「ん〜ぷぅ。」
「ん〜?」
「っぱぁっ!」
「うん。」
赤子は上機嫌。
先程ミルクもたっぷり飲んだし、おしめも変えてもらったばかりだ。
子どもが発する声と同じ高さの音で、チチは返事を返す。
「うきゃあ!」
「はははっ、悟飯ちゃんはお喋りが上手だなぁ。」
よしよし、とベビーベッドに寝かされている悟飯の頭を撫でてやった。
「あ〜っ。」
自分を覗き込む母の顔に向かって手を伸ばす。
チチは、自分に伸ばされたちっちゃな手に、己の手を差し出した。
悟飯の小さな指が、チチの人差し指をきゅっと握り返して来た。
手に触れた物を握り返すのは、小さな赤子の反射運動の一つ。
悟飯は今日も健康そのものだ。
母の顔を見て、ニコッと微笑んでみせた。
つられてチチも笑顔になる。
「ふふっ、今日も悟飯ちゃんはかわいいだなぁ。」
まだ若いチチにとって、子育ては不安も苦労も絶えなかったが、そんな疲れも、我が子の笑顔一つで吹っ飛んでしまった。
「悟空さもそう思うだべ?」
「ん?あっ、ああ!」
母子の触れ合いは上の空。
突然話題を振られた悟空が、すっとん器用な声を出して、うやむやの内に肯定した。
昼食後、珍しく修行に出ずに、リビングでのんびり寛いでいた悟空だが、チチの幸せそうな顔を見て立ち上がる。
そしてベビーベッドへと足を向けた。
「さぁー、悟飯ちゃん、お昼寝の時間だぞ。たーくさん寝て、早く大きくなるだ。」
チチはそう言って、その柔らかく、温かい手をそっと、すべすべの悟飯の頬に添える。
愛しげに目を細め、ゆっくりと撫でてやった。
すぐに、トロンとした表情になった息子を見て、チチは言う。
「見てけれ悟空さ、悟飯ちゃんこんなにお利口さんだぞ。」
悟空がこちらへと向かっている気配を察し、悟飯を撫でながら、後ろにいるだろう夫に話し掛けた。
その瞬間―――。