ドラゴンボール

□フタリアメ
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あなたとの距離が縮まる、雨が好き。










ぐずぐずと曇る空を見上げて、チチは少し急ぎ足になる。

家を出た時は、気持ちの良い晴れ間が広がっていたのに。
いざ街で買い物を済ませてみれば、吹き荒ぶ風に運ばれた黒い雲が、空を厚く塞いでいた。


「急がねぇと降られちまうだな。」


ガサガサと大きな袋をいくつもぶら下げて、チチは家路を急ぐ。

パオズ山からは遥かに遠い、山を降りて更に先にある街へと買い出しに出た際は、いつも大荷物で。
山やふもとでは手に入らない食糧や調味料、生活雑貨や衣類まで。
自ずと購入品はてんこ盛り。

チチの華奢な腕が千切れてしまうのではと思うほどに、ずっしりとそれらは彼女の腕にぶら下がっていた。




風にだんだんと雨の匂いが混じる。
山の方は空気がくすんで見えるから、もう我が家の方では降っているのかもしれない。




長い黒髪を背で揺らしながら、若い女が大荷物を携えて健気に歩き続ける姿は、酷く庇護欲をそそるのか。

時たまジェットフライヤーに乗っている男なんかが、軽い調子で声をかけてくるが。


そんな輩も、“主人が待っているので”とにっこり微笑めば、蜘蛛の子を散らすように去っていった。




「傘、持って来れば良かっただな。」


そう呟いてはみたものの、自分の両手の状況を見て、無意味かと苦笑した。




ごう、と身体に受ける風は、湿気をふんだんに含んで重くまとわり付く。

いくらも経たない内に、顔にぴちゃりぴちゃりと雨粒を感じた。


家はまだまだ遠くて。
ここは野原に伸びた一本道。

雨宿りなんで出来る場所も無く、チチはなるべく荷物が濡れぬように、と袋の口をグッと握って小走りになった。




「う〜…、冷たいだなぁ。」


雨粒を受けぬよう、顔は伏せ気味。
容赦なく強まる雨足に、黒い髪はしとやかに濡れていく。
素肌の腕では、雫が玉になってひっきりなしに流れていった。




こめかみからツゥと雨が伝い、黒髪が白い頬に張り付く。
ぶるりと身体を震わせて、それでも足を進めようとしたその時だった。




「チチっ!」

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