犬夜叉

□願いの在処
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しゃり―――…




固い畳の目に抗うように、小さなくるぶしが、い草を擦る。

荒い息遣いが室内を満たしていた。




「また―――感じたか。」

「っ………。」


赤く染まる耳元に、甘い吐息で囁かれれば、否応無しに背筋に痺れが走る。


背後に殺生丸の厚い胸板を感じながら、りんはぶるりと身を震わせた。




「…あ―――。」


少しでも身動ぎすれば、先程注がれた精が合間から零れ出る。

りんは未だ体内に殺生丸を受け入れたまま。
彼がりんに刺激を加える度に、意図せず中の彼を締め付けては悦ばせていた。






しゃり―――…




妙に硬質な音に、ふとした瞬間に五感が明確になって。

剥き出しの肌を掠めるように触れて来る殺生丸の指先を、敏感に感じずにはいられない。


「も……触っちゃやだぁ……。」


涙を滲ませながら、自分を膝に乗せている相手を顧みれば、何とも冷酷な笑みを浮かべた顔が視界に入った。


「…何故だ。」


肌理細かい肩に口付けを落としながら、殺生丸は問う。


りんが前のめりに倒れぬよう、彼女の腹部に回した左腕を、やんわりと胸元へ伝い上げた。

りんの中に埋めた己を幾度と無く締め上げて来る刺激に、殺生丸は加虐心を煽られている。

今更放すつもりなど毛頭ない。

現に、こうしてりんの身体は素直に悦んでいるのだ。


「……っ…も…苦し…いっ…。」


これ以上殺生丸が入り込まぬよう、彼の膝に突いたか細い両腕が、ふるふると震えていた。


こんな些細な抵抗も、何時まで持つ事か―――


殺生丸はくっと笑い、それでもりんに決定的な快楽は与えない。

今の切羽詰まった状況を楽しんでいた。


背中を向けて己の膝に乗るりんに、執拗に悪戯をけしかける。

さらさらと零れる黒髪は、まるで愛おしんで欲しいと言わんばかりに、日に焼けぬ、ま白な項を晒した。


「私を離そうとせぬのはお前の方なのだがな。」


細やかに黒髪の生え際で呟けば、ギュッと縮こまるりんの身体。
追い討ちを掛けるように、突起した頸椎から背骨を撫で下ろした。


「っ…やぁ……!」


ぶるぶると身体を震わせ、首を隠すようにのけ反る。


途端に中を締め付けて、押し出された白濁がまた一筋、りんの太ももを流れて行った。

その感触に、りんは顔をしかめるが、感じ始めた身体の震えを治める術は無く。

身に触れる殺生丸の指先、吐息、あまつさえ衣擦れにまで反応を返さざるを得ない。




「知っていたか?お前はここが弱い。」


低く甘い、ぬるま湯のようなまったりとした声音の響きが、ぴりぴりとりんの背骨に響く。

大きな手の平が細い首筋をゆっくりと撫で下ろして行く。


「っ!!」


びくんと跳ねるりんの身体。

予想外の強い刺激に、身体を支えていた腕から一気に力が抜ける。


その瞬間。

情事の時、いや、それ以上りんの奥深くまで、殺生丸の雄が埋まった。


「っぁあっ…ぅ…!」


突然、身体の深部に到達した熱に、りんは成す術も無く痙攣する。

それに合わせて、引っ切り無しに彼を締め付け始めた。


「………っ…。」


その感触に、殺生丸もまた冷笑を浮かべる。
冷たいながらも、奥底に潜む熱い欲望をほとばしらせて。


己に全て預けられたりんの儚い重さを楽しみ。


酷く敏感に、与える愛撫に反応を返す彼女に、計り知れない独占欲を感じた。
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