犬夜叉
□命の価値は
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背後からはいつもと変わらぬ日向の香り。
いつしかそれが普通となっていた。
そしてこれからも、そうでなくてはならない。
お前は私を追って当たり前。
そうだろう―――?
りん―――…。
とてとてとて。
幼子の足音が背後より聞こえる。
それはいつもならば殺生丸にとって気にも止めぬ事。
それが常。
しかし今ばかりはその足音に安堵を覚えた。
足音の主は少々青白い顔をしながらも、健気に後を付いて来る。
裸足の足を、自分の意思で動かせる事に新鮮さを感じながら、りんはいつも通り殺生丸の後に従い、長い階段を降りて行った。
唯一つ、普段と違う事と言えば、いつもは止めど無くその唇から溢れ出る言の葉が、今日は押し込められたままという事だ。
喋ってはいけない気がした。
前でなびく銀の髪を必死で追いかける。
―――もう離れたくないから―――
息が切れても、りんはその背を追い続けた。
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