犬夜叉
□鮮やかに、鮮やかに。
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身に注ぐ雨粒も大粒になって肌を叩いた。
真上では青々と茂る葉が懸命に雨粒を受け止めてはいるが。
それはあまり意味を成さず、その下に佇む二人を濡らし続けていた。
「っ………。」
殺生丸が小さな耳をかじる。
そうして舌を這わされれば、もう震えは止まらなくて。
熱くなる頬に、時たま落ちて来る雫にさえ、りんはびくりと身体を跳ねさせる。
「せっしょう…まるさま……。」
毛先を伝って流れて来た雨が、ぴちゃりと目にかかり、りんは慌てて瞼を閉じた。
その隙に、体温の低い手の平が、濡れた衣を押しやって、胸元へと這い入る。
柔らかな膨らみをゆったりと包めば、腕の中でりんがまた震えた。
「邪魔だ……。」
「え……あっ…!」
ぺしゃり。
だくだくと水を含んだ音を立てて、りんの着物は容易に脱がされて行く。
濡れて滑らぬ帯を力で解いて、りんはあっという間に生身を晒す事となった。
「やだぁっ……。」
上半身を殺生丸に後ろ抱きにされたまま、りんは身を捩ってなんとか身体を隠そうとした。
大樹の陰とはいえ、ここは外。
そんな中で堂々と素肌を晒している羞恥は計り知れない。
けれども。着物を纏っていた時には生温い、気持ちの悪い感触しかもたらさなかった梅雨の雨だが。
こうして素肌に受けてみれば、今までの不快感は何処へやら。
少しひんやりとした心地が、ほてり出した肌に気持ち良くて。
滲んだ汗はゆるりと流れていった。
りんはそっと天を仰いでみる。
そこで視界に入って来たのは
濡れる緑の葉っぱ。
その先の曇天。
太い幹。
目に落ちてくる雨粒。
そして
雫を滴らせる 殺生丸。
「気持ち…いいね。」
「これからもっと善くしてやる。」
機嫌も大層良さそうな殺生丸の予想外の台詞に、りんは一瞬にして赤面した。
「やっ…ちがっ…!そうじゃなくて……あっ……!」
無防備に淫らに濡れる胸の飾りを、きゅっと摘んでやれば、途端に跳ね上がる肢体。
雨水を掬いながら、頬に舌を這わせる。
零れて来る雫が跳ねて、震える睫毛。
先ほど咲かせた首の花は、それは鮮やかに咲き濡れていて。
りんの全てが。
酷く扇情的。
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