接吻
□腕と首なら欲望
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そんじょそこらの男達とは違う。
しっかりと引き締まって逞しい腕に、すっと腕を絡ませてみた。
「鬱陶しい、くっつくな。」
「良いじゃない、減るもんじゃなし。」
ベジータに凭れるようにして街中を歩けば、幾つもの視線が自分たちを捉えていく。
整った顔立ちに、鍛え上げられた身体を持つベジータと、スタイル抜群で美人な自分が仲睦まじく歩いていれば、人目も引くだろう。
隣からはチッ、と舌打ちが聞こえたが、無理やり振り解かれることは無かった。
それを良いことに、私は一層愛しい人の腕を抱き込む。
「おいブルマ。」
「たまには良いでしょ。私、あんたの腕好きよ。」
ニコリと上目遣いで微笑んでみれば、ベジータは少し苦い顔をして、フンとそっぽを向いた。
自分より数回りも太い、引き締まった二の腕。
温かく自分を抱き締めてくれる、大好きな人の、大好きなところ。
思いの外滑らかなその肌に、すりすりと擦りよれば、愛しさが込み上げてくる。
堅い筋肉の上に滑っていく、艶やかな青の髪。
ベジータが、少しくすぐったそうに身動ぎしたのが分かった。
それが何だか可愛くて、小さく唇を寄せて、チロリと舐めてみる。
「っ…!!…きさま…。」
「あははっ、つい。」
ペロリと舌を出してみせると、突然顎を掴まれた。
「好き放題しやがって…。」
グイッと顔を大きく背けさせられる。
「ちょっ…!」
「自業自得だ。」
無骨な指が、首筋にかかる青い髪を無造作に払う。
熱く濡れた感触が、首元に触れたと思ったら、すぐにキツく吸い上げられた。
「っあ…。」
白い肌に、色濃く鮮やかな、赤色が咲く。
「先に仕掛けたのはお前だからな。帰ったら、覚悟しておけ。」
「…こんなトコに…人に見られたらどうすんのよ。」
ベジータの言葉に、顔の熱が一気に上がったが、出来るだけ平静を装って彼を睨んだ。
ベジータは片眉を上げながら、払った髪をそっと戻す。
「そうやってくっついていれば、誰からも見えん。」
今度こそ、あからさまに赤面した顔を隠せもせず、彼を見上げれば、少しだけ表情に優越感を浮かべていた。
もう敵わない、と思い至って、素直にまた大好きな腕に、自分の腕を絡める。
一度沸き上がった欲望には、大人しく従うことにした。
(終)
12.3.4 脱稿