春夏秋冬〜五十の調

□会いたくて
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「はなび?」


「そう、花火。私の国で夏に楽しむ物なの。」


そう言ってかごめ様は、手に持った、紙が張り合わされた棒の先に火を灯した。


暫くしてパチパチという音と共に、鮮やかな光の雫が飛び散る。


「うわぁ、キレイ!」


「でしょ!りんちゃんも、どうぞ。」


光と影に揺れる景色の中、手渡された“花火”に、蝋燭から火を移す。


今度はシュー、と耳につく大きな音と共に、銀色の眩しい光が一気に飛び出した。


夏の暗がりに、目が眩む白銀の光。


そこに、一瞬浮かんだ残像。




殺生丸様みたい…。




途端に、切なさが込み上げて来た。




今度はいつ来てくれるのかな…。
早く会いたいよ、殺生丸様…。




やがて勢いを無くし、ジジジ…と今まで煌々と良く燃えていた光が消えて、辺りにはあっという間に闇が舞い戻る。


火薬の独特な匂いだけが漂い、働かない五感を刺激した。

虫や蛙達の鳴き声が蘇って来る。




―――すぐに、いなくなっちゃうんだから。




闇に慣れて来た目が、残り火を宿す花火の先端を捕らえた。





会ったら、離れるのが辛くなっちゃうのに…。




やがてポタリと残り火も消え落ちて…。




本当は、ずっと、一緒にいたいんだよ?


一緒に居れるだけで、りんはこの世の全てが輝いて見えるのに。


こんな風に、目の前が陰ってしまう事も無いのに…。




ねぇ殺生丸様?


いつになったらりんの事、“お迎え”に来てくれるの?


…それとも、もう“お迎え”は、無いの…?




ねぇ、会いたい。




会いたいよ、殺生丸様……。






(終)
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