文書壱

□Mal d'amour(1)
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 1つだけ。あんたに言えないことがある。
 あんたは俺の光。俺の望み。俺の全て。
 あんたと出会えて恋に落ち、結ばれたことは俺の誇り。
 共に育ち夢を追い、護るために剣を抜いた。そして二人で真選組をつくり上げた、あんたは俺の命そのもの。


 けれどそれが、いつしか恐ろしくなった。
 もしも。もしもあんたがいなくなってしまったら――。
 俺はどうなるだろう。生きていけるだろうか。俺のままでいられるだろうか。
 そんな不安に、不意に胸が焼きつくされそうになる。
 言ったらあんたはどうするだろう。杞憂だと笑い飛ばしてくれるだろうか。それとも、俺たちはいつだって戦いの中に身を置いているんだ、案外真剣な答えがかえってくるかもしれない。




 1つだけ、あんたに言えないことがある。
 怖いんだ。何かが、否、何もかもが。
 あんたと出会わせてくれたこの世界が、いつか急にあんたを奪って行ってしまいそうで。
 あんたと共に生きた時間が、いつの間にかあんたを連れ去ってしまいそうで。
 怖いんだ。


 だから時々思う。
 あんたを忘れられたら、と。
 あんたが俺の手の届かないところへ行ってしまう前に、俺があんたのことを忘れられたらいいのに、と。
 ――時々、そんなことを思うんだ。
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