〜envy you〜






チェックメイト。



貴方がそう呟いて、目を細める瞬間。

俺はきっと情けない顔をしているに違いない。


怒りじゃない。
これは



嫉妬




◇ ◆ ◇





「スザク!」

スザクが廊下を歩いていると、突如後ろか名前を叫ばれた。
振り返るとそこには愛しい恋人が息を切らして立っていた。

「まだ負けって決まってないだろ。勝負しろ」

「……ルル、君らしくないよ。そんなにこだわらなくても―」

「うるさい」

ルルーシュは本気らしい。
スザクはため息をつく。
ルルーシュの言う勝負とば今日の体育の短距離走の時のこと。
もちろん運動神経抜群のスザクはぶっちぎり一位だったのだがルルーシュは何か気に入らなかったらしい。

その次の時間にスザクはルルーシュに『勝負しろ』と言われたのである。

内容はもちろん短距離走である。ルルーシュの負けは目にみえているのに。

大体ルルーシュがスザクに体力面でムキになるのはおかしい。

だからスザクはルルーシュの誘いを躊躇うのだ。

「ルルは体育にも参加していなかったのに何で競争したいのさ」

「窓から見てたんだよ。とにかく、放課後グラウンドに来い!」

スザクが話をそらそうとするも、ルルーシュはそう言って有無を言わせずに会話を切る。
もう一度スザクは問い掛けようとしたが、ルルーシュは足早に去って行ってしまった。

ルルーシュが去った後、しばらくスザクは呆然と廊下に立っていた。




◇ ◆ ◇





「お兄さま、どうかしましたか?」

ナナリーがクラブハウスに戻ってきたルルーシュの異変に気付く。

「どうかって…?どうもしてないよ」

「苛立っているような…」

「…そんな事ないよ」

出来るだけ柔らかくナナリーに告げると彼女はそれならいいんですけど、と微笑んだ。



そのまま自室に戻り、テーブルの上に無造作に置かれたチェス盤を見る。


―――チェックメイト。


あの時。
あの言葉を思い出した時。
窓から不意に見えたスザクに焦燥感を覚えた。



体力バカに勝ちたいから勝負を挑んだ?



違う


彼より優位に立ちたいなんて思う――



嫉妬




◇ ◆ ◇





床に手をつき、肩で息を整える。


あれから辺りが夜闇に包まれた頃、ルルーシュとスザクは競争した。

それは競争にもならなかった。スザクの圧勝だったのだ。


負けた原因の一つは、ルルーシュが転んだこともあるのだが。

「ルル、大丈夫?」

「うるさい…」

ルルーシュが膝を握りしめている。
手を退かして見ると、血が出ている。

「手当てしないと!」

「自業自得だ。帰る」

ルルーシュは素早くスザクの手を払って立ち上がろうとする。が、力も抜けてしまったらしくその場に座り込んでしまった。

「…ルル、ごめんね」

うっすらルルーシュの目尻に涙が溜まっていたのでスザクは何故か謝ってしまった。

「………謝るな」

「ごめん」

「だから……」

「ごめんね。…とにかく帰ろう。手当てする」

スザクがルルーシュを抱き上げるとルルーシュは素直に従ってくれた。

「すまなかった」

今度はルルーシュが謝ってきた。

「君は何も悪くないよ」

「いや……」



悪いのは俺。



「ちょっと苛立ってて」



だって……あの人とお前を重ねてしまった。



「大丈夫。それよりもう大丈夫だよね」

「うん」

「じゃあナナリーが待ってるよ。早く戻ろうか」

「お前がいると喜ぶぞ」








…やっとわかった。

俺は優位に立ちたかったらしい。








大切な人を守るために、ね。








「お腹すいたな」

スザクの言葉にルルーシュは笑顔を返す。








いつか並んでやる。


シュナイゼル兄様。



そして―スザク。








チェックメイト。








俺があなたたちに言えるように。


end








〜感想〜


リナちゃんからもらった小説Vvルル負けず嫌いだからって、スザクに挑むなんて無謀すぎる。しかも案の定転けて(お約束)
そんなドジっ子ルルーシュが大好きです(>_<)
リナちゃん小説ありがとうVv



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