キリリク小説

□ある一日
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「とにかく。頼んだぞ。僕はもう帰る。」


外を見るとすっかり日は落ち辺りは紫と黒の中間色で染まっていた。


「分かった。だけど今度の結界用の機材をチェックすんの忘れるなよ。」
「ああ。」


それから自前のでっかい鞄に資料を入れ、スタスタと出て行った。外は少し寒く、思わず腕をさすってしまった。事務所から数百メートル離れたところにある工場へ行くと、数人の男達が機材のメンテナンスをしていた。


「やあ、精が出ているね。」


声をかけると男達が一斉に振り返り、工場長である男が人受けする笑顔を浮かべた。


「カズネさん!!もうお帰りで?」
「ああ、設計図はもう出来たんでね…機材の調子はどう?」
「問題ないです!!コイツらはもう元気いっぱいで…」


工場長は目を細めて目の前の機材をわが子を慈しむように撫でた。どれだけ彼が自分の作ったものの愛着を覚えているかよくわかる。
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