キリリク小説

□ある一日
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まだこれは君と会わなかったときの僕。





ナキアの端にある事務所。そこが僕の働いている所。


「おーい、カズネ。この設計図おかしくないか?これじゃクロヴァリスの作用がうまく働かないと思うんだけど…」
「ああ、それでいいんだよ。あの土地は水の力が強すぎるんだ。水の作用を抑え目にしてそのかわり火の力を…」


結界を設計するのが僕の仕事。この世界の力の流れを理解してこそ出来る仕事。この仕事が僕は大好きだ。小さい頃から綺麗なものが好きで、理路整然とした公式、歪みの無い結晶を見るのが大好きだった。そういう思いが僕の今の仕事へのリソースとなった。


「セリ、そういうワケでこれはこれでいいんだ。それと…悪いけどこの設計図をタキ達に出してくれないか?」
「なんでお前が行かないんだよ。」


職業学校からの友人のセリは少しニヤニヤしながら僕を見た。分かっているくせに…


「タキが煩いからだよ、分かってる事聞くな。」
「アイツお前のこと好きだからなぁ…」


タキというのはセリと同じく学生時代からの知り合いだった。何故だかしらないが僕に好意らしいものを抱いているらしい。ウワサだが。


「そんなの本人が言ったわけじゃないだろ。」
「見りゃあわかるさ。アイツお前が昔エリザちゃんと付き合ってた時そーとー荒れてたんだぜ?」
「…エリザ…彼女アイツに相当いびられてたな、そういえば…」


それでも


「ありえないありえない。駄目駄目。男は恋愛対象外。」
「ふーん男も結構いいけどな。俺はね。」


ファルスはそんなに同性愛に厳しくない国だ。教会で男同士で結婚式をあげているのを何回か見たことがある。でも自分は男に恋愛感情をいだいたことは無かった。でも付き合ってきた女を本当に心から愛したという事はない。嫉妬とかはあったが、彼女の為なら死ねるとかそんな事思いもしなかった。
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