キリリク小説
□シュキルのある日
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紫がかった綺麗な空、心地いい風、小鳥の可愛い鳴き声…普通ならきっと心躍る風景なのでしょうが…今の私には楽しむ余裕すらない…
「セイレン…また逃げ出して…」
城の南東にある日当たりの良い部屋、女の子らしくピンクと白で統一された可愛らしい部屋の持ち主は早朝だというのにもういなかった。窓は開けっ放しで風にふかれるカーテンを見て外からでたのだなということはすぐに分かった。
「はぁ…この時間どこに行くというのでしょう…まだ孤児院も開いてないでしょうに…」
孤児院…ジュライ君のところ…か…
最近のセイレンはとても可愛くなったと思う。昔は本当にじゃじゃ馬で女の子らしさのかけらも無かった。初めて会った日のセイレンと比べればそれでもいいと思っていたが…それがある日突然、頬をピンクにそめ、ある一人の男の子のことを一生懸命に話しだした。どこにでもいる恋する女の子になったのだ。自分も恋したことはあるが周りからすればあんな風に見えていたのかと思うとなんとも言えない様な不思議な気持ちになった。
「本当にあの子達を見ていると昔のことを思い出してしまいますね…」
外を見るともう太陽は地平線から出ていて紫がかっていた空はもう青になりつつあった。
「っと…こんな事している場合じゃないですね。早く見つけなければ…」