04/12の日記

13:45
12日から18日に拍手を下さった皆様へ
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世界にたった一つしか無いもの。










誰にも渡せない、大切なもの。










それが無くては安心できなくて、










それでなくては堪えきれなくて。










たった一つしか無いそのものに、










―――私は全てを、預けたくなる。





「あ、こんな所にいたんですね竜崎」

探しましたよ、と言いながら近づいてくる彼女を見れば、
怒っているのか頬が少し膨らんでいて。
Lは微かにその目を細めた。
とことこと疑う事無く近づいてくるその存在に、
軽く手を伸ばせば、受け入れるように彼女も手を伸ばす。
伸ばされたその細く白いか弱い手を握ると、Lは自分に向かって
彼女の手を力強く引いた。

「竜、崎…?」

突然のLの行動に驚いたのか、彼の目の前に倒れこんだ彼女は
目の前の顔を見上げると、ゆっくりと彼の名を呼んだ。
けれどLは何も言わず、椅子の上から静かに片足を下ろした。

抱えていた素足が、ぺたりと床につく。
右足を下ろして、続けて左足も下ろした。
ぺたりと床に揃えられた足、
膝を抱えずに座っているLの姿、
全てがおかしくて、クスクスと彼女は声を立てて笑う。

「推理力、40%減ですね?」
「減少しても貴女の考えなら、すぐに分かります」

冗談めかして問う彼女に、Lは真面目な顔をして答える。
足を下ろした所為か、姿勢よく座る姿がおかしくて、
彼女はまた声を立てて笑った。

そんな彼女に、Lは掴んでいた手を引くと

「どうぞ」

と自分の膝の上をぽんぽんと叩いた。

困ったように、恥ずかしそうに笑う彼女の顔。
その顔にLが首を傾げて見せれば、また声を立てて彼女が笑う。
そんな彼女の様子にムスッとして、



「―――さん」



彼女の名を呼べば、



「はい」



と返事をして彼女がLの膝の上に座った。
膝の上に微かな重みが加わる。
遠慮がちに座る彼女の身体を引き寄せると、
Lは自分の上に座る彼女を包み込むように腕を回した。

彼女の肩に顔を埋める。
徐々にLの背中が丸められていく。
自分を包み込むようなLの姿にクスリと笑みを漏らすと
自分も同じようにLを包む為に、彼の背中に腕を回した。



世界にたった一人しかいないもの。










―――それは互いの存在。










誰にも渡せない、大切なもの。










―――それは、今手の中にいる存在。










それがいなくては安心できなくて、










―――側にいなくては安心できなくて。










それでなくては堪えきれなくて。










―――誰も代わりなんて出来なくて。










たった一人しかいないそのものに、










時折、










―――私は全てを、預けたくなる。










そこに、彼が、彼女がいるか―――確かめるために。



終。

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