03/25の日記

02:36
拍手を下さった皆様へ
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そんな気分じゃないって言ってるのに。





竜崎は、ずるい。





そんな事したくないって言ってるのに。





私の心を読む竜崎は、絶対ずるい。






























「竜崎っ、いい加減にして下さいっ!」

バンッと大きな音を立てて立ち上がった私に、
驚いたように皆が振り返った。
きょとんとした顔。
驚いたようなその顔に、悪いなって思ったけれど、
それよりも何よりも今の状態が許せなかった。

ソファーの上に膝を抱えていつもの恰好で座る竜崎を、
私はきつく睨みつける。
けれど、そんな事は何の意味も無いとでも言うかのように、
竜崎はいつものように飄々としていて、何だか余計に腹が立った。

イライラとした感情が、誰かに八つ当たりしたいと叫んでいる。
けれど、今の私はそれを許されない状態で。
したいのに出来ないもどかしい状態に、更に苛立ちは募る。





―――何で、こんな事になったんだろう。





考えてみるけれど答えは全然見つからなくて。
ただ、もどかしさだけが全身を駆け巡る。


ふぅ。口から溜息が零れ落ちる。
手元のカップに目を向ければ、いつの間にか中身は空っぽになっていて。
私は慌ててキッチンに向かおうとした。










ジャラリ。










瞬間、鈍い物音がした。
鈍いと言うよりは、重い鎖の音と言った方が良いかも知れない。
私が歩く度に、ジャラリ、ジャラリと音がする。
同時に段々と重さは増してきて、後数歩というところで
重さでバランスが崩れた。



倒れる―――。



そう思ったけれど、いつまで経っても身体に痛みは感じなくて。
恐る恐る目を開けてみれば、目の前には不満そうな竜崎の顔があった。

「りゅうざ…」
「何で何も言わないんですか」

彼の名前を呼びかけて、遮られた。
不満そうな顔から、不平の言葉が漏れる。
瞬間、見る見るその顔を不機嫌なものに変えていく竜崎に、
何だか無性に腹が立った。

「言うわけ無いでしょうッ!」

強い口調で否定する。

「キッチンに行きたいなら行きたいと言えば良いじゃないですか。
今の状況を考えたら、貴女にはそれしか選択肢が無いと分かる筈です」

けれど竜崎が私の強い口調なんかに怯む筈もなく。
更に強い口調で言い返す。

「誰の所為ですか、誰の!」
「自業自得です」
「何にもして無いです!」
「したじゃないですか」
「してません」
「しました」
「してませんっ!」
「しました」

繰り返される平行線の言い合いに、いつの間にか皆は呆れ顔で。
けれど一向に引こうとしない目の前の顔に、私の意地も強くなる。

「してませんっ!!!」
「したじゃないですか!」

更に強く否定すれば、痺れを切らしたのか竜崎の口調も強くなる。
普段の彼からは想像出来ないその強い口調にちょっと驚いたけれど、
それでも怯まず私は問い返した。

「私が何をしたって言うんですか!」

ぶぅっと口を尖らせて問えば、竜崎が恨めしそうに私を睨む。
何だかその顔が可愛く見えたけれど、だからってこの状態を許してしまう訳にもいかず、
私は不満に満ちた顔を必死に作り続ける。


ふぅ。
竜崎の口から溜息が落ちる。
そんな竜崎の態度に、更に腹が立った。
竜崎に溜息を吐かれるような事はしていない。
悪いのは竜崎。その筈なのに。
そう思いながらジッと竜崎を見据えると、彼の口がゆっくりと開かれた。




















「私を置いてベッドから出ました。だから、お仕置きです」

























突然の竜崎の言葉。
思わず驚いて思考が止まるけれど、慌てて竜崎の口を両手で塞ぐ。
けれど、どうやらそんな私の行動は遅かったようで。
辺りに悲鳴にも似た叫び声が響き渡った。

「りゅ、竜崎っ、それ本当ですかッ!?」

松田さんの驚いた声。
相沢さんは口をパクパクさせてまるで金魚のようで。
模木さんはどうやら思考が止まってるようで、ピクリとも動かない。
夜神さんは聞こえない振りをしているけれど、耳は真っ赤に染まっていて。
月君は、呆然とただ立ち尽くしている。
その横で、ミサさんがニヤニヤと笑みを浮かべていた。

私は恥ずかしくてワタリに助けを求めるけれど、ワタリはいつの間にか部屋を出て行ってしまっていて。
助けてくれる人はどこにもいない。
恥ずかしさから涙目になる。
逃げようにも、竜崎と繋がれた鎖が邪魔で動くに動けない。
そんな私の心情に気づいたのか、竜崎はもう一度私の側に近づくと、
その長い腕を私の腰にしっかりと巻きつけてきた。

そして、一言。





「今日は逃げないと言うのなら、…外してあげます」





と、皆に聞こえるように囁いた。





竜崎はずるい。





私が竜崎から逃げられないって知ってるくせに、





私から逃げ場をどんどん奪っていって。





その腕の中に閉じ込める。





そして、





それを私が嫌がってないって知ってる竜崎は、





絶対に、ずるい!



終。


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