□誰にもあげない!
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波は良好。
天気は上々。

ゴーイングメリー号は、その船首に得意気な笑みを浮かべ、順調に航海を続けていた。

そして今日は、

年に一度の、

とてもとても大切な1日――。


* * * * * * *


「ふあ〜ぁ、良っく寝たな〜」

大きなあくびと共に、ぺたぺたと音を立てながらキッチンへ向かう人影。

寝起きでまだ少しぼさぼさな黒髪、細い腕がスラリと覗く赤いノースリーブ、どんな砂浜も駆け回れるお気に入りのサンダル…そう、我らが船長ルフィだ。


そして、そんなルフィをキッチン内からゴーグルで見張る姿がある。

「よし、予定通りまっすぐこっちに向かってるぞ!」

高い、というよりは長い鼻、しましまのリストバンドにオーバーオールを着た彼は、狙撃手のウソップ。

「OK!それじゃ、ルフィがドアを開けた瞬間狙ってくわよ?」

肩には思い出のタトゥー、モデル並みのプロポーションを持った紅一点、航海士のナミ。

「メロリン了解でェ〜すvV任せて下さい、ナミすわ〜んvV」

前髪が長めの金髪にグルグルまゆげ、スーツをびしっと着こなしているのは、コックのサンジ。
…今は、ナミの号令のおかげで果てしなくデレデレだけど。


ルフィがキッチンのドアに近付く歩数に合わせて、ウソップがカウントダウンする。

「3…2…1っ」

ガチャッ

「主役のご到着だぜ!!」

「待ってました♪皆いくわよ、せーのっ」

「はよ〜ッス…」

パンパンパーーンッッ!!!!

ルフィの挨拶に被さる様にして、三人の手から放たれた大量のクラッカー音が鳴り響く。

「「「ハッピーバースデー、ルフィっ!!!」」」

「…へ…?」

突然の出来事で自分の身に何が起きたのか分からず、ルフィはカラフルな紙吹雪と紙テープを頭から浴びながらぽかんとしている。

「やぁね〜今日は5月5日よ?アンタの誕生日じゃない」

「――あ。」

「“あ”って、本当に忘れてたのかぁ?やれやれ…」
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