岩及のお話とか(仮)20160624up

□たかが5センチ、されど5センチ
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ずっとずっと好きだった。
好きだと伝えられるなんて思ってもみなかった。
好きだと言われるなんて、もっともっと思ってなかった…。



思えば最近、岩ちゃんの笑う顔を見ていない気がする。
いやいや、岩ちゃんが笑ってない訳じゃないよ!?
ただ…その笑顔を向けた先が俺じゃないだけ。
マッキーと爆笑してたり、まっつんと何かにやにや笑いあってたり、温田っちに笑わされたり。
笑ってる顔はたくさん見る。
ただ…俺の方を見て笑ってくれないだけ。
今なら思い出せる岩ちゃんの顔は眉間にシワ寄せて睨んでるか、目ぇ開いて怒鳴ってる顔ばっかで。
俺…好きだって言われたの夢だったのかな…。
あ、ダメだ。
何かちょっと泣きそうになる…。


「おいてめぇ、さっきから一人で何ぐたぐた考えてんだ?」
部活終わり、ロッカーで着替えていると岩ちゃんがふいに話しかけてきた。
安定の眉間にシワ寄せた顔で岩ちゃんが俺を睨みつけている。
最近ずっとこんな顔ばかり向けられてる気がする。
「…なんでもないよ、ちょっと考え事してただけだし」
まだ何も怒られるようなことしてないじゃん…。
ただ…ちょっと寂しくなってるだけ。
全部全部岩ちゃんのせいなだけ。
「及川」
「んー?」
岩ちゃんを見ると寂しくなるから、目線を逸らしたままネクタイと格闘してると、ふいに気配が近づいて…気がついた時にはすぐ目の前に岩ちゃんの顔があった。
少し、下の目線から睨まれる。
吸い込まれそうな、目だよね…岩ちゃん。
「…な、なに?」
「…なんもねぇ」
ふっと、岩ちゃんが俯く。
岩ちゃんの表情が見えなくなる。
たかが5センチの身長差だけど、それだけあればもう下を向かれたら岩ちゃんの表情はわからなくなってしまう。
近ければ近いほど。
ねぇ、なんで俺には笑ってくれないの…?


「ぶふっ」
突然、岩ちゃんが吹き出した。
え?
「お前…わかりやすすぎだろ」
岩ちゃんが、俺を見上げている。
目を少し細めて、口元もにやっと笑ってて。
「我慢してるこっちの身にもなれ」
…え?
すっと、岩ちゃんの指が…俺の唇に触れる。
「そんな泣きそうな顔すんな…俺からしたら丸見えだべ」
岩ちゃんが少し照れたように耳を赤くして、俺を見て笑ってる…。
「お前見てっとついつい顔緩んじまうから、見ねぇようにしてたんだけど」
「はぁ!?」
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