岩及のお話とか(仮)20160624up

□ビターチョコレート
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街中にチョコレートの甘い香りが充満する季節がやってきたらしい。
今年は14日が日曜日だからか、明らかに2日も早いのに金曜日から可愛いらしいラッピングのチョコレートが校内でウロウロしてやがる。
そして毎年の事だが…そんなチョコレートを抱えてこいつは部室にやって来るのだ。
「やっほー!しばらく部活終わりにおやつ困らないね!」
どさどさと、部室の真ん中に紙袋を2つばかり置いている及川は同封されてる手紙やカードをとりあえず回収している。
女子達も、毎年の事だからか、コイツが大量に貰う事は分かってて、最初からバレー部の皆さんで…と言ってくれたりもするらしい。
とはいえ…。
「岩ちゃん…凄い顔…眉間の皺寄りすぎ!」
及川がふと顔を上げてこっちを向いたかと思ったら…ぷぷっと吹き出しながら笑いやがる。
「部室の匂いが甘ったるすぎんだろ…」
正直、そんなに甘いモンが得意じゃねーんだ俺は。
しかし眉間に皺寄せる理由はそこじゃねぇ…。
「でもさ〜…男子高校生の汗くささよりはマシじゃね?」
花巻が笑うと、松川までが。
「この季節限定だしなぁ…まぁ、毎年何でコイツがこんなモテんのか謎が深まるばかりだけど。」
「そこな!」
3年だけでなく、後輩にまで頷かれて、及川がぶすくれる。
「ちょっと!やっぱり酷くない!?」
「…体育館行くべ」
騒ぐ及川達に付き合ってたらそろそろ監督も来る時間になる。
とりあえず、騒ぐ及川を置いて、俺は先に部室を出た。
…何で俺はあのどうしようもないあいつなんか好きなんだろうな…。
そんな俺の背中を、じっと及川が見てた事にもそん時は気づいてなかったんだけど。
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