★Shaman King★
□Lost Butterfly
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「世界を新しくしたいんだよ」
全て壊して、一から作り直したい。
目の前の少年は、そう言った。
面に微笑を携え、それでいて、どこか哀しそうな色を滲ませながら。
「誰だって。君だって。そう思ったことは一度や二度じゃないはずだ」
そうだろ?、と首を傾げ、まっすぐに見据えてきた目を逸らせるはずがなかった。
確かに、この世界を―――自分を含めた全てを憎んでいたこともあった。
今だって、楽しいことばかりではない。
理不尽な障壁はいつだって否応なく立ちはだかるし、やりきれない思いをすることなんて、数えるのも馬鹿らしくなるほどだ。
だから、答える。正直に。
「そうね」、と。
満足な回答が得られた少年の顔に、安堵が見えた気がした。
しかし、少女は続ける。
「でもあたしは。この世界はまだまだ捨てたもんじゃないって思ってる。信じられるものが、大切なものが増えすぎて、残念ながらもう手放せないのよ」
5年前のあの日。
“なんとかしてやる”と手を差し伸べてくれた人。
大切な者を引き換えにしてまで、暗い暗い闇の中から引きずり出してくれた人。
その人が、今も変わらず傍にいる。
綺麗なものを見つけては、拾って掬って教えてくれる。
「あんたのことを想う人は、ちゃんといる。あんたがこの世界で大切にしているモノだって、ちゃんとあるんでしょ?」
目を逸らしているだけ。
信じた愛情に裏切られるかもしれないと、恐れているだけ。
目の前の少年が、過去の自分と同じ殻に閉じ込められているだけなのだとしたら――
どうか気付いて欲しい。